出た154キロ!

 ソフトバンクの3年目左腕川原弘之投手(20)が16日の紅白戦で2イニングを投げ2安打無失点に抑えた。なんとこの時期に、自己最速の155キロに1キロと迫る154キロを計測。昨年、プエルトリコのウインターリーグで覚えたツーシームも駆使し、先発ローテーション入りを大きくアピールした。

 ひるまなかった。紅白戦とはいえ、初めての1軍マウンドに立った。いきなり迎えたのは12球団最強を誇るクリーンアップだ。20歳の左腕川原は、逃げずに立ち向かった。

 最初の打者多村への2球目で直球150キロをマークした。カウント2-2からこの日最速の154キロ直球で詰まらせ、二ゴロに打ちとった。ペーニャはツーシームで二塁ライナー。小久保、松田に安打されたが無失点で切り抜けた。2イニング目は下位打線を無安打に抑えた。首脳陣に大きくアピールする、上々の1軍“デビュー戦”だった。

 「緊張はしませんでした。いい感じで投げられた。ペーニャの打球はすごくて、自分が当たったかと思いました」

 持ち味の速球で勝負した。150キロ以上をマークしたのは6球。キャンプのこの時期としては異例だ。加えて、昨年のウインターリーグで覚えたツーシームを解禁した。現地ではメジャーを代表するイバン・ロドリゲス捕手(40=ナショナルズ)とバッテリーを組み「ぶれる球を覚えた方がいい」とアドバイスされた。カットボールとともに習得したツーシームはシュートしながら落ち、自身も操作不能。それでもメジャー通算84発のペーニャを仕留め、山崎から空振り三振を奪うなど有効に決まった。

 「打者の反応も良かったし、細川さんからもおもしろいと言われました」

 伸び盛りだ。キャンプ2日目に224勝左腕の工藤公康氏(48=日刊スポーツ評論家)から指導を受けた。「右足をリズムよく上げた方がいい」という指導から、テンポを意識して投げるようになった。「感覚的にいい方向にいっていると思います。明らかなボール球も減ってきていますから」と工藤効果に感謝した。

 3年目左腕のアピールは高山投手コーチも大歓迎だ。「堂々と投げていて周りが見えていたね。先発ローテは本人しだい。このぐらいの力を継続してもらいたいね」と目を細めた。「無失点に抑えたことが自信になりました。次につながりました」。あどけなさが抜けない20歳の若武者が、スピード違反の速球で先発ローテ入りに近づいている。【前田泰子】<川原弘之アラカルト>

 ◆博多っ子

 1991年(平3)8月23日、福岡市生まれ。

 ◆左投げ転向

 南片江小1年で野球を始める。小3のときに左投げに転向。片江中では「福岡ウイングス」に所属し3年で「ホークスカップ」優勝。福岡大大濠では2年夏からエース。秋の九州大会準々決勝で清峰の今村(広島)と投げ合い、敗退。3年夏は県大会5回戦敗退。

 ◆4兄弟

 4人兄弟の2番目。兄は福岡大大濠で西武大石と同期。2歳下の弟も福岡大大濠野球部所属。現在中学生の末弟も投手をしている。

 ◆スピード王

 昨年のジュニアオールスターで日本人左腕最速となる155キロをマークした。

 ◆1軍経験なし

 09年ドラフト2位で入団し2年間1軍経験なし。昨年のウエスタン・リーグ成績は8試合登板で1勝1敗。防御率2・42。

 ◆サイズ

 185センチ、95キロ。入団時は80キロだった。