<ソフトバンク0-5楽天>◇4日◇福岡ヤフードーム

 エース田中が腰痛で離脱中の楽天投手陣に、またまた「孝行息子」が現れた。ケルビン・ヒメネス投手(31)がソフトバンク6回戦で7回無失点。課題の制球が安定し、無四球で昨季のチャンピオンチームを封じ込めた。4月7日以来となる今季2勝目で、早くも来日1年目だった昨季の勝利数(1)を超えた。今日5日も勝って、今季初の勝率5割だ。

 唯一のピンチは力でねじ伏せた。ヒメネスは5-0と大量リードに恵まれながら、勝利投手の権利までアウト1つの5回2死から連打を許した。一、二塁で代打松中を迎えた。1発を許せば、一気に流れを失う。力みからか、ボールが2球続いた。ここで、一塁フェルナンデスがマウンドに来てくれた。スペイン語で話しかけられ、一呼吸入れてくれた。3球目、148キロはこの日最速タイ。真ん中に入ったが、球威が勝り遊飛に打ち取った。

 明確な課題を持って臨んだ。「四球を出さない」。球威はチームでもトップクラス。ただ、四球を出すとマウンドでイライラ病が始まる。そこから失点を重ねることが多い。前回ソフトバンクと対戦した4月21日は、5回途中3四球で4点を失った。「今日もストライクを取りにいったけど、簡単に取ることはしなかった。変化球を打者の内、外にうまく投げ分けた」と胸を張った。スライダー、チェンジアップを適度に織り交ぜ、主導権を握った。

 来日2年目に懸けている。10年に韓国・斗山で14勝の実績を引っ提げ楽天入りしたが、昨季は指先のマメにも苦しみ、わずか1勝。決意を行動で示した。外国人選手には珍しく、今年1月中旬に早々と来日。例年よりも寒さが厳しい仙台で日本人選手と一緒に自主トレを行った。「キャンプ前に、しっかり体ができているところを見てほしい」と言った。果たして、2月の久米島キャンプ。ブルペン投球を見た星野監督は「別のヤツが投げているかと思った」とうなった。

 田中が離脱してからは、塩見、戸村、辛島と若手の頑張りが目立つ。そこにヒメネスも加わった。「彼が戻ってくるまで、全員でカバーして全力を尽くしたい」とコメントが心憎い。頼もしさを増したカリブの怪腕が、次もビシッと抑えてみせる。【古川真弥】