<ロッテ6-6阪神>◇17日◇QVCマリン

 息子から父への最高の贈り物だった。ロッテ根元俊一内野手(28)が「父の日」に1発を含むプロ入り初の4安打。3回2死、阪神エース能見の直球を完璧に捉える。右翼席への放物線は東京・瑞穂町から駆けつけ、一塁側スタンドで見守る父美治(よしはる)さん(58)の目にもはっきり映った。実はプレゼントとして和風の部屋着を用意。だが、それ以上に今季初の完売となった3万人の前での1号ソロはプライスレスな贈り物となった。

 試合は乱戦の末にドロー。根元の4安打は3点に結び付いた。それだけに「負けなくてよかった。そしてこういう日に打ててよかった。僕も(3月に第1子が生まれ)父親になった年だから」と優しく笑った。美治さんも「一昨年も私たちの結婚記念日の5月13日に本塁打を打ってくれた。父の日だから、もしかしたらと思っていましたが」と幸せそうに話した。

 6年前。会社員だった父が家族に聞いた。「野球選手の寿命は短い。見られるうちに見たいから、仕事をやめたい」。父は定年前ということもあり、反対を覚悟していた。だが息子は感謝の思いでいっぱいだった。平日は帰宅するのは午後10時ごろで、高校3年時は野球部の父母会会長を務め、休みなく尽くしてくれたという。だから他の家族とともに息子は退職を賛同した。以来、父は年間約80試合を観戦している。

 根元が小さいころから、父に言われ続けたのは「自分の好きなことでメシを食え」。プロを狙えるレベルになった大学時代に、この言葉が理解できた。「自分の子供にもいろいろ伝えたい」。好きな野球に打ち込む姿を、いつまでも見せ続けたい。【広重竜太郎】