<楽天0-7西武>◇17日◇秋田

 西武のノーヒッター、エース岸孝之投手(29)が貫禄の完封勝利だ。楽天を散発4安打に抑え込み、昨年8月11日のオリックス戦以来となる無四球完封勝利を挙げた。ノーヒットノーランを達成した2日のロッテ戦も含めて自身4連勝。チームの連敗を4で止めた。エースの快投を、最下位からの逆襲の起点としたい。

 右から左。試合の間、西風が、右翼から左翼へと吹き続けた。最高気温13度。冷たい風が、マウンドの岸のユニホームを揺らした。

 ノーヒットノーランを達成した2日のQVCマリンでも、風を巧みに利用した。あの夜ロッテ打線を苦しめたのと同じく、ホップする直球が、楽天打線を封じ込んだ。9回2死、岡島にも最後は直球で空振り三振。スコアボードの表示では138キロだが、軌道はそんなもんじゃない。ホップして捕手のミットに突き刺さる。岸独特の直球だ。それでも「今日は、風でカーブとチェンジアップは曲がってくれました。直球はイマイチな感じでした」と淡々と話す。変化球では風を味方に付けたが、直球の伸び具合には不満が募る。レベルの高さを物語っている。

 監督のささやきにも、右から左だった。連敗を4で止めた伊原監督は「いつもの岸らしい投球」と絶賛。さらに「2、3日前かな。『次は完封でお願いしますよ』と言ったら、言った通りに投げてくれた」と、頼れるエースとのエピソードも披露した。ところが、岸本人は「すいません。覚えてません」と苦笑い。監督からの全幅の信頼と大きな期待を、重圧にはしない。監督のあいさつを受け流すのも、泰然自若なエースならではだ。

 ノーヒットノーランを達成したことで、自分の中での変化を問われると「ありません」と受け流す。この日も、念頭には「先頭を抑えようと。甘く入らないように。とにかく制球だけ気を付けよう」と特別な意識はなかったと言う。それでも、今季初の無四球完封で4連勝。さらに、安打を許した3イニングは、すべて併殺でしのぎ、試合を完全に支配した。「勝って良かった。自分にも勝ちがついたので、最高です」と、チームの勝利を喜んだ。絶対的エースがいて、4番中村も復帰し外国人も来た。いつまでも最下位に居座るチームではない。【金子航】