<オリックス0-1巨人>◇5月31日◇京セラドーム大阪

 オリックスはエース金子千尋(30)の快挙はならず、延長12回の激闘で巨人に競り負けた。金子は今季最多3万5903人が集まった本拠地マウンドで9回まで無安打無得点の快投。援護がないまま、9回裏の攻撃で代打を送られてノーヒットノーランは不成立だった。延長12回に4番手馬原が亀井に決勝ソロを許し、痛すぎる完封負けだ。

 金子は快挙を逃した瞬間をベンチで見守った。9回2死満塁。ベンチ最前列でサヨナラ勝ちに備えたが、ヘルマンが右飛に倒れ0-0のまま延長に突入した。

 1点さえあれば快挙を成し遂げていた。9回を11奪三振で無安打。4四球を出したが、安定感は抜群だった。9回サヨナラ勝ちならノーヒッター。記憶に残る快投は、勝利にさえ結びつかなかった。

 「ノーヒットだったのは知っていましたが、最後まで0-0でいっていたのでそちらに気持ちがいくことなく最後まで投げられました。9回裏にサヨナラなら記録で、それはそれでうれしいけど、ぼくの使命はチームに勝ちをつけること。それができなかったのでノーヒットへのコメントはできません」。日付が変わろうかとする帰り際、今季最多144球を振り返った。

 9回には痛烈なライナーが遊撃手の頭上を襲った。2死二塁、144球目。スタンドが悲鳴をあげた阿部の打球は安達がジャンプしてつかみとった。金子は笑ってグラブをたたいた。

 奪三振ショーでもあった。1回先頭から2回のセペダまで4連続K。8回1死で長野を最速147キロ直球で見逃し三振。今季5度目の2ケタ奪三振と独壇場だった。ネット裏ではレンジャーズ、ツインズなどメジャー6球団のスカウトが視察。「低めへのコントロールが素晴らしいし、直球も変化球もメジャーで通用するボールだ」とメジャー関係者も目を細めた。

 それ以上に喜んだのは本拠地を埋めたファンだ。今季最多3万5903人をのみ込んだ京セラドーム大阪で、巨人打線に1安打も許さなかったエースの投球こそ「満員御礼」だった。【堀まどか】

 ▼金子が9回を無安打で降板。9回まで無安打に抑えながら、試合が延長戦に突入してノーヒットノーランを逃したのは06年4月15日八木(日本ハム)以来11人目。9人は延長に入ってから安打を許し、スコア0-0のまま無安打で降板は延長10回を投げた八木に次いで2人目だ。八木は打席に立たないDH制の試合で、9回以上を無安打に抑えていた投手に代打が送られたのは初めてだった。過去に延長戦でノーヒットノーランを達成したのは73年8月30日江夏(阪神=延長11回)しかいない。また、金子は11三振を奪い、早くも今季102奪三振。5月で100奪三振以上は68年鈴木啓(近鉄=110個)以来、46年ぶり。