<日本ハム6-2広島>◇4日◇札幌ドーム

 出た、160キロ!

 日本ハム大谷翔平投手(19)がパ・リーグ初、日本人2人目の160キロ台をマークした。1回2死、広島丸を空振り三振に仕留めた5球目で計測し、本拠地ファンを沸かせた。軽度の左足首捻挫で5回1失点降板も、プロ最多タイの10奪三振で5勝目。打っては5回に逆転の口火となる幸運な二塁打を放ち、広島エース前田との投げ合いを制した。

 背中を少し丸め、姿を現した。ヒーローインタビュー。大谷がバツ悪そうに、ボソボソと回想した。プロ入り最速160キロの大台をたたき出した。マエケンに投げて、打って、勝った。「交流戦で連勝がなかったので、ここでやるしかないと思っていた」。10奪三振快投も5回71球で降板。投打に全力プレーの代償とはいえ、爽快スマイルは封印したままだった。

 2者連続三振でスタートした1回2死。丸への5球目、外角やや高めのウイニングショット、160キロで空振り三振に切った。「手応えはすごくありました」。プロ入り最速を2キロ更新。パの歴代最速で、栗山監督が「時間の問題」と予測通りのスーパー・パフォーマンスだった。

 持ち前の懸命さで、つまずいた。2回にエルドレッドに先制ソロを献上。1点を追う5回、先頭打者で前田のチェンジアップを強振。中前への幸運なテキサス二塁打で好機を演出した。犠打後に三塁へ進み、中島の左前打で猛烈なスライディングで生還した。ただ左足首外側靱帯(じんたい)の軽度の捻挫により、大事をとって降板した。一挙5点の逆転劇の伏線になり、二刀流フル稼働で5勝目も、無念の幕引きになった。

 信じていた無数の思い、無数の目に応えた。入団1年目の13年1月。新人合同自主トレ。徐行運転でブルペン入りしベールを脱いだ。花巻東時代に最速160キロ。地方球場の岩手県営での数字で一部で懐疑的な見方もあった。球団内で「タブー」な比較論に、いきなり発展した。レンジャーズ・ダルビッシュ。両者の駆け出しを知る複数の首脳陣、スタッフらの多くは結論付けた。「大谷の方が直球は上」とうならせた。

 球場内では、あこがれの野茂英雄氏(45)も快投を見守った。沖縄キャンプ中の2月にプライベートで極秘対面。数時間、野球談議に花を咲かせた。160キロに到達し、球界屈指の右腕との投げ合いを制した。「今後につながると思う」。目指すパイオニアの称号を引き継ぐ資格を、剛腕で証明した。【高山通史】

 ◆広島前田(9番打者として大谷と対戦。3回無死では156キロ外角低めボール球を空振り三振。5回2死一塁では外角153キロを右飛)「やっぱり速かった。今年打席に立った投手の中では一番速かった」

 ◆大谷の過去の160キロ

 花巻東3年の12年7月19日、一関学院との岩手県大会準決勝(岩手県営野球場)で6回2死二、三塁から見逃し三振を奪った直球が球場スピードガンで160キロを表示した。

 ▼大谷が1回、丸への5球目にプロ入り最速の160キロをマークした。これまでのプロ最速は158キロ。日本人投手の160キロ台は10年の由規(ヤクルト=161キロ)に次いで2人目。2ケタ奪三振は今年4月12日西武戦(10個)に次いでプロ2度目。5回で降板し、プロ初の規定投球回到達へは1/3回足りなかった。