年俸調停も視野に入れていた中日大島洋平外野手(29)が“陥落”した。18日、名古屋市内の球団事務所で3度目の契約更改交渉に臨み、サインした。提示額は過去2回と変わらない1775万円アップの7400万円(金額は推定)。出来高などのオプションもなく愛着のあるチームとの交渉を「長引かせたくなかった」という心情からだった。

 3度目の交渉で契約を更改した。無数のフラッシュを浴びて会見場に現れた大島は、心境を包み隠さずに語った。

 「僕自身がこういうことで長引かせたくないという気持ちがあった。ドラゴンズは地元だし、好きだし、もめたくはない。僕が納得すれば…と思ってサインした」

 こわばった表情は「納得」という言葉からほど遠いように見える。交渉の長期化は避けたいという選手会長の苦渋の決断。提示額が変わらない球団に大島が折れた形だ。

 家族会議を重ねてきた。妻真世さん(26)から「もう、それだけもらってるんだから」とサインを求められたことを明かした。ただ、個人の問題だけではないと振り上げたこぶし。簡単に下ろすわけにはいかなかった。11月の1度目交渉から苦しみ抜いた1カ月間を終えて「スッキリした」と笑顔も出た。

 70分間の3度目の交渉は過去2度と比べて大きな変化はなかった。西山球団代表が査定基準を細かく説明。チーム順位の影響などを確認した。ただ、同代表からは「今年の成績を来年にやれば(順位にかかわらず)絶対に1億にいく」と言われた。

 「自分自身も『ここまでやりました』という成績を残せていない。首位打者か最多安打をとって言いたい」

 今季は球団最多タイの186安打を放った。141試合に出場し、打率3割1分8厘の成績も残した。地元出身の「球団の顔」。だが、来季の立場は保証されてはいない。外野手は新人の友永、井領に新助っ人ナニータも加入した。

 「負けないです。(外野手の)中心となって試合に出ていけるように頑張ります」

 目指すべき姿は、すべての人を黙らせる隙のない選手。来年の今頃は笑って大幅昇給を勝ち取る。【桝井聡】