日本野球連盟は5日、2013年度の社会人ベストナインを発表し、日本製紙石巻のDH伊東亮大(りょうた、24=武蔵大)が同部から初めて選出された。194センチの長身スラッガーで、今夏の都市対抗野球では長い手足を生かした勝負強い打撃で8強入りに貢献。高校、大学と無名も、社会人2年目でブレークしたこの男の今後に大注目だ。

 日本製紙石巻・伊東は受賞を受け「正直びっくりした」と本心を語った。7月の都市対抗での活躍が受賞に結びついた。初戦信越クラブ戦で得点に絡む2安打を放ち、続く2回戦JFE西日本戦でも2回に点差を広げる2点タイムリーを打つなど大活躍。大会優秀選手にも選ばれた。大会直前までは「30打席ぐらいノーヒットでした」と絶不調。「それでも使ってくれた木村(泰雄)監督のおかげです」と、4番に置き続けてくれた前監督に感謝した。

 194センチの恵まれた体を持ちながら、順風満帆の野球人生ではなかった。神奈川・桐光学園に左腕として入学するも、肩を痛め内野手に転向。だが一塁しか出来ず、守備にも難があったため出場機会は少なかった。高3では三塁コーチとして甲子園出場。高校で野球をやめるつもりだったが、縁あって武蔵大へ進み大型打者として開花。大学の先輩を追い、12年日本製紙石巻に入社した。

 盛岡大付から広島入りした2歳下の弟・昂大(こうた)のように、東北の地からプロ入りを夢見る。昨年は一塁、今年はDHだったが、現在はチーム事情とスローイング強化のため、外野を練習中だ。「守備が出来ればプロだね、ってよく言われます」と伊東は苦笑い。伊藤大造新監督(47)は「来季外野として出場も十分あります」と守備力アップに期待を寄せる。

 今季の通算打率は2割5分4厘。チームの4番として満足いくものではなかった。伊東は3年目のシーズンに向け「チームに迷惑をかけないように。オープン戦から結果を勝ち取れるようにしたい」。チームのため、プロへの扉を開くため、来年は伊東にとって勝負の1年になる。【高場泉穂】

 ◆伊東亮大(いとう・りょうた)1989年(平元)7月27日、神奈川県大和市生まれ。幼稚園年長で野球を始める。上和田中では「瀬谷ボーイズ」に所属し、投手。桐光学園では1年夏に内野手に転向し、秋にベンチ入り。3年夏には三塁コーチとして甲子園出場。武蔵大では2年春からレギュラー。3年で一塁手として首都大学リーグベストナイン。194センチ、92キロ。左投げ左打ち。家族は母、兄、弟、妹。弟・昂大(こうた)は盛岡大付から投手として10年広島入り(13年戦力外)。