松井は背番号1でプロに挑む。楽天からドラフト1位指名された桐光学園・松井裕樹投手(18)が28日、川崎市内のホテルで入団交渉を行った。契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円(金額は推定)で合意し、同球団の高卒新人では田中将大投手(25)以来の最高条件となった。背番号は高校から慣れ親しんだ「1」を本人が要望し、交渉の席で決定した。

 堂々の“1番”宣言だった。会見が始まった直後、松井は楽天での背番号を聞かれると「1に決まりました」と力強く言い切った。球団側から提示されたのは、1、12、15、19の空き番号。その中で迷わずに「1番でお願いします」と即答した。プロの投手では珍しい番号に安部井スカウト部長も「1番というのは選手にとって大きいこと。本当に1番でいいのかと確認しました」と驚いた。

 桐光学園1年秋からずっと背負い続けたエースナンバーに決めたのには理由がある。「自分の野球の原点は高校野球にある。そこで長くつけさせてもらった背番号でスタートしたいと思ったからです」と話した。昨夏、1試合22奪三振の甲子園記録を樹立し、全国に名をとどろかせた番号にこだわり、初心を忘れないためにも選択した。背番号1の投手は元近鉄の317勝左腕、鈴木啓示氏が有名だが、「さっき(交渉の席で)聞きました。(背番号1と言えば)王さんですね」と知らなかった様子。ドラフト指名後に、同級生や後輩から背番号について聞かれた時から「1番にしようかなと」と、心の中では決めていた。

 小学6年時に所属したベイスターズジュニアでは背番号10。甲斐綾乃投手(3年=蒲田女子)という女子球児がエースナンバーをつけた。中学時代の青葉緑東リトルシニアでも2番手の投手だったため、高校で1番を背負ってからは「負けないのがエース」と重みを口にしていた。チームの中心となる番号だけに「負けないピッチャー。チームを勝たせられるピッチャーになりたい」とシーズン不敗だった田中のような投手になりたいと意気込んだ。

 現在は球団から渡された練習メニューをこなし、1月の新人合同自主トレに向けて調整を行っている。くしくもこの日は18Uワールドカップでともに戦った大阪桐蔭・森友哉捕手(18)も西武入団が決まった。松井は同世代で1番になりたいかと聞かれると「はい、もちろんです」と言い切った。背番号1の左腕が世代NO・1も日本一もつかみ取る。【島根純】

 ◆投手の背番号1

 最近では大嶺祐太(ロッテ)が07~09年につけた。現役はいない。過去の代表格は鈴木啓示(近鉄)で、球団が消滅するまで永久欠番だった。他には大久保美智男(広島)近藤真一(中日)野田浩司、中込伸、谷中真二(以上阪神)愛甲猛(ロッテ=投手から内野手に転向)加藤伸一(オリックス)らが使用。楽天の1番は05~10年に塩川達也、11、12年に岩村明憲と内野手が使い、今季は空き番だった。