清宮海斗(左)に次回の挑戦を申し込む丸藤正道(2019年2月1日撮影)
清宮海斗(左)に次回の挑戦を申し込む丸藤正道(2019年2月1日撮影)

プロレスリング・ノアの若きGHCヘビー級王者清宮海斗(22)は、3月10日、横浜文化体育館で「方舟(はこぶね)の天才」と呼ばれる団体のエース、丸藤正道(39)と2度目の防衛戦を行う。2月1日よりオーナーが代わり、長年親しまれたマットの色や会社のロゴが新しくなる、新生ノア船出の日の大一番だ。

新生ノアの新たな“顔”をかけて戦う2人には、少なからず因縁がある。清宮は、15年3月、三沢光晴にあこがれ、ノアの入団テストを受けた。その際の試験官が丸藤だった。「合格でいいよ」。「お前、入ったらもっとつらいから、それまでもっと頑張れよ」。丸藤の言葉で、清宮のプロレス人生は始まった。

現在、清宮の得意技の1つとなっているドロップキックも、丸藤に「お前のドロップキックいいんじゃないの」と褒められ、本格的に取り組んだ。「丸藤さんのひと言がなかったら、ドロップキックをここまで大切に使っていなかった」という。丸藤の言葉を信じ、あらゆる局面のドロップキックを1日何回となく練習した。そして、試合の流れを変える局面で使う、重要なワザに磨き上げた。

清宮は、15年12月のデビューから順調に成長してきた。中でも、トップレスラーへのきっかけをつかんだのは、17年7月から約半年間のカナダ遠征だった。言葉も話せない中、毎日のように試合をした。戦いの中で実績を積み、半年間で10回も、ヘビー級のタイトル戦に挑戦する機会をつかんだ。ベルトを巻くことはかなわなかったが「チャンピオンシップの経験を何度も積んだことで、雰囲気や、試合のやり方も分かってきた」と自信を持って帰国。それからわずか1年で、GHCヘビー級のベルトを巻いた。

丸藤は、今回と同じようなタイトル戦を逆の立場で経験した。06年12月10日、日本武道館大会。初めてGHCヘビー級王座を獲得し、2度目の防衛戦で、当時のノアのエース、三沢光晴と対戦し、ベルトを奪われた。ちょうど、今回の清宮と同じ状況だった。「あの時と同じように、重い試合。歴史に残る試合を残さないと。あの時負けてしまった。歴史は繰り返す。今回はオレが勝つ」と丸藤は断言する。

ノアの新体制がスタートする3月10日。「オレがいる場所がノア。マットの色が変わろうが、ロゴが変わろうが気にしていない。1回、しっかりオレが先頭に立って、誰の目から見ても分かりやすいものを示していきたい」と話す丸藤。「今のノアの顔はオレ。ベルトを守って、上の世代に完全決着をつけたい」と意気込む王者・清宮。方舟の船頭の座をかけた歴史的一戦は見逃せない。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

GHCヘビー級チャンピオンベルトを肩に乗せインタビューを受ける清宮海斗(2019年2月1日撮影)
GHCヘビー級チャンピオンベルトを肩に乗せインタビューを受ける清宮海斗(2019年2月1日撮影)