ボクシングの興行形態が大きな変革期を迎えているように感じる。

今までの“常識”はいかに大きな箱(=会場)を準備して、どれだけ観客を入れられるか。また、世界戦では地上波によるテレビ中継が当たり前だった。

最近は動画配信が主流になってきた。“モンスター”井上尚弥のドネア戦はAmazonプライムで独占中継。ネットの環境が整っていれば、世界中で視聴することができる。

そんな世の流れに敏感に反応している1人が、元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏(35)だ。昨春に大阪市内でジムを立ち上げた時から「選手ファースト」の改革を打ち出していた。

大きな柱は2つ。選手が他に仕事をしなければ生活できない現状を打破するべく、ファイトマネーの明確化と充実。そして、いわゆる興行の前座とされる4回戦の試合まで、すべての選手に光を当てることだ。

興毅氏はアベマTVとタッグを組む形ですでに実行。入場から派手な演出を施し、オープニングの試合から中継した。次回興行は8月14日にエディオンアリーナ大阪の第1競技場というでかい箱で行う。メインに但馬ミツロが最速2戦目でタイトルを狙う日本ヘビー級王座戦、セミは東洋太平洋スーパーフェザー級王者・力石政法の初防衛戦とタイトルマッチは組まれたが、世界戦が行われる舞台で異例の興行となる。

このほどプロモーターライセンスを取得し、会長業からプロモート業に専念する意向で、肩書も「創始者」を意味するファウンダーに変更する。興毅氏は「今の状況のままなら選手がかわいそうやん。だれかが変えていかんと。自分がその口火を切っていきたい」と意気込む。

井上はドネア戦で日本選手最高額のファイトマネー、推定2億円超とされる。しかし海外の選手と比較すれば、決して「高い」とは言えない。

時に命を張り、他競技に比べて選手生命も長いとはいえないのがボクシング。将来を見据え、「やりたい」と思わせる魅力をどれだけ乗せられるか。「先駆者」になろうとしている興毅氏の手腕に注目したい。【実藤健一】

8・14興行の会見を行なった亀田興毅会長(中央右)ら(2022年6月25日撮影)
8・14興行の会見を行なった亀田興毅会長(中央右)ら(2022年6月25日撮影)