小よく大を制す-。ここ数場所は身長168センチの人気力士、前頭炎鵬(25=宮城野)の奮闘が、大相撲の醍醐味(だいごみ)を世間に知らしめている。初場所では上位陣との対戦が増える見通し。来年20年はより注目度が増しそうだ。

炎鵬だけでなく、7月の名古屋場所で12勝を挙げた前頭照強(24=伊勢ケ浜)の活躍も記憶に新しいところ。その照強の弟弟子、171センチの幕下翠富士(23=伊勢ケ浜)が“ネクスト小兵”に名乗りを上げそうだ。九州場所では東幕下12枚目で6勝1敗の好成績を残し、来年の初場所(1月12日初日、東京・両国国技館)では幕下5枚目以内、最高位更新も見えてきた。キリッとした精悍(せいかん)な顔つきは、炎鵬と同様に女性ファンからの注目を集めるかもしれない。

今場所の好成績の要因として、圧力が増したことを翠富士は挙げた。「立ち合いで1発で持っていかれることが今まで多かったけど、今場所は少なかった」。体重は先場所から約5キロ増えて108キロ。胸部も目に見えてたくましくなった。お手本は先場所まで付け人を務めていた兄弟子の照強。照強も169センチと小柄ながら、低い姿勢からの鋭い踏み込みが強みで「照強関からはいつも押す力が大事と言われている」と、兄弟子の助言を胸に刻んでいる。来場所での再十両が決まった大関経験者の照ノ富士(28=伊勢ケ浜)とともに、24時間営業のトレーニングジムで肉体改造を図った効果も出たという。

実績十分の親方衆にも鍛えられている。九州場所前の岐阜・関市で行われた部屋の合宿では、部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)や楯山親方(元前頭誉富士)に稽古をつけてもらった。現役を退いて間もない2人による指導は「正直厳しいです」と苦笑い。胸を出してもらうこともあり「安治川親方には『下半身で押せ』といつも言われている。今場所は稽古の成果が出たと思う」と胸を張った。

近大相撲部を2年で中退して角界に飛び込み、3年が過ぎた。2年半で関取に昇進する見込みがなければ「やめるつもりだった」と話すが、来場所は関取の座が射程圏。「死ぬ気で頑張りたい」。あこがれの大銀杏(おおいちょう)を結って、炎鵬や照強らとともに、小兵が大相撲を盛り上げる。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)