11月6、7日と大阪・堺市大浜公園相撲場で行われた全国学生相撲選手権を取材した。文字通り、学生相撲の頂点を争う。この大会から大相撲の世界へとつながった力士は少なくない。「金の卵」を発掘する意味でも楽しみな大会だ。

初日、個人戦の決勝は日大4年の川副圭太と日体大2年の花田秀虎が対戦した。身長165センチと小柄な川副が、鋭い立ち合いから懐に潜り込み、休まず攻めたて最後は寄り倒した。「ずっとけがしてたんで、試合に出ることもできず、この大会にすべてをかけていた」。今年5月ごろに右アキレス腱(けん)を部分断裂し、10月になってようやく相撲がとれるようになった。最終学年、最後の学生選手権にすべてをかけた意地は見事だった。

一方、負けた花田は大相撲まで見据えた「金の卵」か。昨年度の全日本選手権で1年生でアマ横綱となった。184センチ、138キロ。体格的にも伸びしろは多い。アマ横綱を獲得したことで、大相撲にいけば幕下15枚目格付け出しの資格を得られる。今回、学生横綱も獲得していれば、10枚目格の超エリートコースだが、資格期限は2年。いろいろな制限をかけられているが、花田は将来を見据えて学生の期間を有効にすべく考えている。

日体大は団体で7年ぶりの優勝を飾った。大将を務めた花田の試合後の言葉が印象的だった。「学生の間に(大相撲の)大関クラスの力をつけたい。その力を持って(大相撲に)行きたいです」。学生の段階で、すでに「大関」レベルを意識する。その思いの深さに感心するしかなかった。

花田は卒業してから大相撲に行く方針。アマ横綱の“特典”は期限外となるがこの先、タイトルを積み重ねる自信もあるのだろう。大相撲ファンが望むひとつが「日本人横綱」。まだ先になるかもしれないが、花田には楽しみな可能性が詰まっている。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)