今年最大のビッグマッチ「ミドル級頂上決戦第2弾」は、メキシコの至宝の勝利に終わった。挑戦者のカネロこと元2階級制覇王者サウル・アルバレス(28=メキシコ)が、8年間王者であり続けたゲンナジー・ゴロフキン(36=カザフスタン)に2-0の判定勝ち(115-113、115-113、114-114)でプロ初黒星をつけ、1年ぶりの再戦に決着をつけた。

アルバレスは50勝(34KO)1敗2分け、ゴロフキンは38勝(34KO)1敗1分けとなった。

立ち上がりからアルバレスの積極性が目立った。ゴロフキンの重くコンスタントなジャブを恐れずに、前に出た。2回には左のアッパーをカウンターで顔面にヒットさせるなど、リズムをつかんだ。ゴロフキンは4回に左の多彩な連打で正面から突破口を探り、シャープなアッパーも披露したが、アルバレスの勢いは止まらない。5回には連打のボディーブローを的確に集め、ゴロフキンを後退させた。

流れが変わったのは終盤になってから。スタミナの影響か手数が減ったアルバレスに対し、ゴロフキンのペースが落ちない。10回には右ストレートを顔面に打ち込み、相手を下がらせた。ボディーブローの影響で動きに鈍さは出たように感じさせたが、序盤の劣勢を盛り返してみせた。12回を戦い抜くと、最後は互いに抱擁した。

ともに一発でパスした前日計量の写真撮影時には、アルバレスがゴロフキンに挑発的に額を付き合わせ、関係者が制止に入る一触即発状態になった。1年前、引き分けに終わった「第1弾」ではあった互いへの尊敬の念は消えうせたとともに公言して臨んだ戦いだった。すべてはドーピング問題に起因していた。

引き分けで再戦の機運が高まり、5月に決着戦が組まれたが、アルバレスのドーピング違反が発覚。陽性反応を示したクレンブテロールは、メキシコの家畜に使用されてはいるが、筋肉増強剤にあたる禁止薬物だった。「メキシコで食べた牛肉が汚染されていた」と故意ではないと主張し、出場停止6カ月という短期間の処分で済んだが、これに対してゴロフキンは疑問を突きつけた。「薬物入りの牛肉を誤って食べたという彼の主張は信じない」と批判したことで、両者は一気に敵対モードとなった。リスペクトなき頂上決戦はそうして初戦と互いの心情を変えながら、ゴングの時を迎えていた。

勝利のリングで、アルバレスは「セコンドが接戦だと教えてくれた。感情が高ぶって言葉がありません。みなさんに感謝します。自分を信じてくれたみなさん、ありがとう」と声を張り上げた。ゴロフキンについては、「彼は素晴らしいパンチャー」「栄誉ある素晴らしいライバル。必要な存在。良い試合ができた」とも述べた。3度目の戦いについては「もし再戦、三度目の正直を求めるなら、しっかり家族との休みを取ってやりたい」とした。

WBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)の動向にも大きく影響してくる決戦は、アルバレスの勝利で幕を下ろした。