WBO世界スーパーフライ級3位井岡一翔(29)が、日本ボクシング界初の世界4階級制覇に失敗した。同級王座決定戦で、自分と同じ世界3階級覇者の同級1位ドニー・ニエテスに12回を戦い、判定1-2で敗れた。17年大みそかに「井岡家の夢」の3階級制覇達成を理由に引退し、昨年9月に自分の夢の「唯一無二の存在」を求め、現役復帰したが、日本選手未踏の壁は厚かった。

世界3階級制覇は、おじの井岡弘樹氏が及ばなかった「井岡家の夢」だった。世界4階級制覇は? 「復帰した理由の1つ。挑戦、決意です」と井岡は言っていた。ミニマム級47・6キロからスーパーフライ級52・1キロまで体重差は4・5キロ。グラム単位の減量と向き合うボクサーには、とてつもなく大きな数字だ。日本では井岡を含めた7人が3階級制覇に成功したが、井岡以外の6人は4階級目の世界戦リングにも立っていない。井岡と同じ4階級に挑み、2階級に跳ね返された弘樹氏は「何が違うって、パンチ力が違う」と言う。ニエテスも井岡と同じ3階級覇者。「厳しい試合になる。接戦。五分五分」と試合を予想していた。

井岡はニエテスを研究し尽くした。イスマエル・サラストレーナー(61)は「カズトが復帰を決めた時から、ニエテスにフォーカスしていた」という。初の世界王座に就いた11年2月のWBCミニマム級戦から同年8月の初防衛までをサポート。現役復帰を決めた井岡の熱望で今年8月初旬、7年ぶりに再タッグを結成した。ニエテス戦発表は11月11日だが、その3カ月前から対策は始まっていた。

同氏は連日朝6時に選手の心拍数をチェックするなど、きめ細かいサポートに加え、世界王者19人を育てた経験、技術、戦略を持つ名伯楽だ。ニエテスを「完璧なカウンターを打てる。直線的でなく、柔軟でハイレベルな厳しい相手」と評価をした上で「カズトにはすごいタレントがある。リスクを冒して勝機をつかむハートもある。大いにチャンスはある」と話した。井岡は同トレーナーと5週間、計108ラウンドのスパーリングを消化。ニエテス対策を体にたたき込んだ。

それでも、やはり壁は厚かった。17年の大みそかに引退を表明し、9カ月後に米国で電撃復帰。その2カ月後には歌手谷村奈南との離婚を発表し、約1年半の夫婦生活にピリオドを打った。公私で岐路に立った2018年を終えた。

「これからも海外でやっていきたい。アメリカで挑戦を続けたい」という。3月24日で30歳になるが、世界4階級制覇の夢はまだ終わらない。