IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(32)が、挑戦者で19年G1クライマックス覇者の飯伏幸太(37)を下し、5度目の防衛を果たした。

5日は、この日IWGPインターコンチネンタル新王者となった内藤哲也(37)と史上初の2冠をかけて戦う。

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オカダは王者の誇りを腕にこめた。必殺のレインメーカーを1発、2発。それでも飯伏は起き上がる。ともにマットに倒れたまま腕は離さない。鬼の表情で相手を起き上がらせ3、4発と続けると両手を広げて勝利を確信。再びレインメーカーを見舞ったところで飯伏の膝をくらうが、切り返してマットに打ち付ける。ダメ押しの5度目のレインメーカーで3カウントを奪った。

達成感と悔しさ、両方が込み上げた。リングでマイクを持つと「最強はIWGPヘビー級チャンピオンのこのおれだー。そして超満員にならなかったー」と叫んだ。観客動員を実数発表した16年以降初の4万人超え。当日開放した外野席はまばらだったものの、アリーナなどはぎっしり。右肩上がりの新日本人気に加え、この数カ月のオカダのテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などへのPR活動も奏功した。それでも4万3000人の超満員を公言していたため、悔しい結果だった。

「笑いたい人は笑ってもらってもいいですし、ばかにしても構いません。でも、またその分のパワーを持って、悔しさを胸に超満員に向かっていきたい」

12年2月にエース棚橋弘至から初奪取してから積み上げた最多通算防衛記録はこの日で30回。32歳で絶対王者に君臨するオカダの夢はもう個人のタイトルにとどまらない。「チャンピオンになるってことは自分だけのこと。お客さんと一緒に夢を達成したい」。昨年はW杯をきっかけに湧き上がったラグビー人気に刺激を受け、嫉妬した。価値、人気を上げて、「多くの方が胸張って『プロレス好きだよ』って言える世の中にしたい」と夢を広げる。

IWGPヘビーを「金メダル」ととらえるオカダは、インターコンチとの史上初の2冠に価値を見いださない。内藤との2冠戦で目指すのは勝利と、世界に胸を張る最高の戦いだ。「きょうこんな戦いをして、明日もタイトルマッチ。こんな過酷な競技、オリンピックにないでしょ。プロレスのパワーを世界に届けて、五輪の盛り上げに一役買いたい」。2夜連続の熱い戦いで20年の東京に火をともす。【高場泉穂】

◆IWGPインターコンチネンタル王座 11年5月の米国大会の目玉のベルトとして新設される。無差別級。海外からのIWGPヘビー級への登竜門的位置づけだったが、4代目の中邑真輔がベルトを白に一新。通算17度の防衛戦で丸藤や永田らと名勝負を繰り広げ、IWGPヘビー級とは異なる路線を生んだ。中邑が最多5度戴冠。8の最多連続、17の最多通算防衛記録も持つ。

◆オカダ・カズチカ 本名・岡田和睦。1987年(昭62)11月8日、愛知県安城市生まれ。中学校卒業後にメキシコにあるプロレスラー養成学校闘龍門に入門し04年8月にメキシコでデビュー。07年8月に新日本プロレス入り。12年2月には棚橋を下し、初めてIWGPヘビー級王座を獲得。同年8月、初出場のG1クライマックスで史上最年少優勝。IWGPヘビー級は第57、59、63、65、69代王者で、通算29度の最多防衛記録を持つ。65代王者として12度の防衛も、1代では最多。得意技はレインメーカー。今年4月に結婚を発表。妻は人気声優三森すずこ。191センチ、107キロ。