IBF世界スーパーバンタム級暫定王者岩佐亮佑(31=セレス)が、2冠奪取に失敗した。IBF&WBAスーパー世界同級王者ムロジョン・アフマダエリエフ(26=ウズベキスタン)との王座統一戦。19年12月の王座奪取以来の試合だったが、アマ経験豊富な同国の英雄に5回TKO負けを喫した。日本人として旧ソ連での世界戦は5戦全敗となり、5人目の2団体統一王者の座も逃した。

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岩佐は伸ばした髪を束ね、まるで野武士のような風貌だった。グレーのガウンは羽織はかまを模し、右胸には赤い金魚が描かれていた。「人生で一番大きな試合。侍の姿を見てほしい」と誓ったリング。コロナ禍で1年4カ月ぶりの試合だった。完全アウェーにも侍魂で勝利を期したがはね返された。

相手は300勝15敗という元アマエリートで、16年リオ五輪では銅メダルを獲得した。18年のプロデビューから8戦目の世界初挑戦で王座を奪取。岩佐は「アマ出身で技術があり、自由奔放で勢いがある」と分析。小林会長は「勢いをつけさせないよう前半は腹に打ち込みたい。5回まで五分なら」と読んでいた。

アフマダエリエフは昨年1月に2冠王者だったダニエル・ローマン(米国)に2-1で判定勝ちした。岩佐は現地で観戦していた。史上初めて4団体を統一したバーナード・ホプキンス(米国)からは会場で「お前を知っている。お前なら勝てる」とエールを送られた。何よりの自信となっていたが、期待に応えられなかった。

これまでに喫した3敗は、後に世界王者となった山中の1敗と、世界戦での2敗。いずれもサウスポーと苦手にしていた。19年12月のマーロン・タパレス戦では左ストレートできれいに仕留め「前回結果を出した。鬼門は突破した」と話していたが、またもサウスポーの壁が立ちはだかった。

米国を拠点とするアフマダリエフにとって、プロ初となるホームでの凱旋(がいせん)試合。国を挙げてのイベントで、岩佐陣営は入国審査もなく、飛行機に横付けされた車でホテル入り。まさに「国賓級の扱い」だった。

海外では4戦目で、15年には英国でも世界挑戦した。「1回経験して不安はない」と話していた。ホテル内にジムもあるが、調整は自室にこもって汗を流した。小林会長は「これまでも海外では部屋で練習していた」と話し、体をケアするトレーナーも同行して万全を期していた。

旧ソ連では、これまで日本人がウクライナで3人、ロシアで1人と、計4人が世界戦に出場。いずれも世界挑戦だったが敗れていた。これで5戦全敗。気負いもなく抜かりない対策をとったが、会場には英雄を応援する観客約6000人を収容。やはり慣れぬアウェーのハンディはあっただろう。

岩佐はすでに次なる標的をぶち上げていた。WBC世界同級王者ルイス・ネリ(26=メキシコ)。自身が黒星を喫した山中に連勝も、薬物疑惑に体重超過の問題児。「いけ好かない。山中さんの意思を引き継いでぶっ飛ばしたい」と意気込んでいた。そのチャンスをつかむ前に王座陥落となった。