プロレスリング・ノアのGHCナショナル王者、杉浦貴(51)が31日、桜庭和志(51)との初防衛戦(後楽園ホール)を迎える。桜庭とは普段杉浦軍のメンバーとしてタッグを組む間柄。「隙あらば関節を決めてくる。スタイルは違うし、やりづらいので、寝技には付き合わない」と自身のスタイルである真っ向勝負で3カウントを狙う。

15日の前哨戦ではフェイスロックに苦しみ、最後はアキレス腱(けん)をキメられギブアップ。「張り手もブロックしたり交わされたりした。ペースがなかなかつかめなかった」と反省した。格闘技の経験を生かし、寝技を得意とする桜庭とはタイプがまるで違う。「僕らはフィニッシュ行くまで段階を踏んでいくが、桜庭はいきなり関節を取っちゃったりするから全然違う」。

40代から自分の体と向き合うようになってきた。リング上では若いころと同じパフォーマンスを出せても、翌日のダメージが大きくなったという。若手の挑戦を受けて立つことが多くなり、スタイルも少しずつ変わってきた。「昔は次の日もトレーニングやっていたけど、今は回復力が遅れるので、休んだりすることもある」。練習も長くだらだらではなく、短時間集中。以前は食事も好きなものを食べて体を大きくしていたが、現在では体にいいものを意識して摂取するようになったという。

今大会は「三沢光晴メモリアル」と題して行われる。09年に亡くなった三沢さんは、00年、当時所属していた全日本が分裂した時にノアに誘ってくれた恩師でもある。たまたま呼ばれた宴席で「心配せずについてこい」と言われ、入門。「体調万全でなくても、弱音とか文句を全く言わない人だった」。タッグを組んだこともある。「絶対に逃げない人だった」。魂を受け継いだ杉浦もリング上では、闘志をむき出しにして、真っ向勝負でぶつかり合う。

今日31日で51歳の誕生日を迎える杉浦。2月に加入し、GHCヘビー級の王者となった58歳武藤の存在に刺激を受ける。「スーパースター。三沢さんが亡くなって、上が丸藤さんと僕になる中、ノアの注目度も上がった。58歳であのパフォーマンスはすごい。自分も59歳までは辞められないな、という意識になった」。新たな目標を定め、まい進し続ける。「三沢さんが見て『ノアは心配ない』と言ってもらえるような大会にしたい」。多くを語らず、杉浦にプロレスを背中で教えてくれた偉大な先輩に、しっかりと結果で応える。【松熊洋介】