日本人最強ともいわれる実績を誇る、RIZINバンタム級王者堀口恭司(31=アメリカン・トップチーム)が23日(日本時間24日)、世界最大級の総合格闘技イベント、ベラトールのハワイ大会でバンタム級ワールドグランプリ(GP)の初戦に臨む。23日の1回戦ではパトリック・ミックス(28=米国)と対戦する。昨年12月、同級王者セルジオ・ペティス(28=米国)とのタイトルマッチで辛酸をなめた堀口が、日刊スポーツのインタビューに応じ、日本格闘技界の発展のため再起を誓った。【取材・構成=藤中栄二、勝部晃多】

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当然ではあるが、一瞬の気のゆるみが命取りになる。堀口は、昨年12月、ケガで返上したベルトを取り戻すために挑んだ王者ペティスとの一戦で、それを痛感した。「しっかり最後まで仕留めきれなかった。自分の中では『このままいけば勝てる』というのがあって、相手の技が見えなくなってしまった」。終始、主導権を握りながらも、仕留められなかった。すると、死角からの裏拳一撃を食らった。RIZINとベラトールのバンタム級2冠王座を獲得した最強ファイターが、マットに大の字で沈んだ。衝撃の4回KO負けだった。

あれから4カ月。それでも、堀口は落ち着き払っていた。「基本的に自分は物事を(引きずるように)考えていない。マイナスになるようなことは考えてもしょうがないので」。19年8月のRIZINで自身初のKO負けを食らった朝倉海に、翌年20年の大みそかにKOでリベンジ。この時のように、やり返せばいいだけ。そんな強い信念がある。

再起をかけ、23日から始まるバンタム級ワールドグランプリに挑む。優勝者は同級暫定王者のベルトとともに優勝賞金100万ドル(1億2000万円)を手にするビッグトーナメント。初戦は同級2位のミックスが相手。身長と手足の長さを生かした寝技を得意とする相手に「厳しい試合になる」と油断はない。「組んで引きつけてくるところを、どう防いで、どう自分の攻撃を当てていけるか」と、勝利のカギを分析する。

王者ペティスはケガのために同GPの出場を回避した。優勝者は同級暫定王者となり、ペティスの復帰後に統一戦が行われる。遠ざかったように思えるリベンジの道のりだが、モチベーションに変化はない。「試合は試合。全然問題ない。優勝すれば暫定王者。それで統一戦をすれば、その方が盛り上がるんじゃないですか」と、むしろ歓迎だ。

ベラトールを盛り上げたい-。その思いの根底に、日本格闘技発展への願いがある。「自分が先頭に立って『日本人も強いんだよ』というところを見せたいんです」。16年から米国フロリダに拠点を移した。友人も家族もいなかった。言葉もわからない。そんな状態の中、練習漬けの毎日を送ってきた。日本に帰りたいと思うこともあった。それでも「俺は、勝つために来た。これが普通なんだ」と、自分に言い聞かせた。自身が米国で活躍する姿を見せることで、日本の格闘技界を活性化させることが目標だ。

トーナメントで勝ち上がれば、日本開催で“凱旋(がいせん)”する可能性もありそうだ。「日本の方に知ってもらえるし(日本に大会を)連れてきたい思いはありますね」。K-1やPRIDEを見て格闘家に憧れた高校時代。その修学旅行以来となるハワイの地から、堀口が捲土(けんど)重来を期す。

◆堀口恭司(ほりぐち・きょうじ)1990年(平2)10月12日、群馬県高崎市生まれ。5歳から空手を始める。作新学院高空手部出身。上京し、故山本“KID”徳郁さんの内弟子に。10年5月に修斗でプロデビュー。13年10月からUFCに参戦し、7勝1敗。17年4月からRIZINを主戦場とし、18年12月に初代RIZINバンタム級王座を戴冠。19年6月にはベラトール同級王座を獲得し史上初の2冠達成。21年9月にベラトールへの定期参戦を発表した。16年から米国を拠点とし、米フロリダ州のアメリカン・トップチームに所属。プロ通算33戦29勝(15KO)4敗。163センチ、61キロ。

◆ベラトール 08年に米国で創立された世界最大級の総合格闘技団体。米国ではUFCに次ぐ規模、人気を誇る。「BELLATOR」はラテン語で「戦士」を意味する。男子はヘビー級からバンタム級までの7階級、女子はフェザー級からストロー級までの3階級制。試合は円形のケージ(金網)で行われる。19年12月にはRIZINと共同でベラトールジャパン大会をさいたまスーパーアリーナで開催した。日本国内の配信パートナーは昨年12月からU-NEXT。今回のバンタム級ワールドグランプリには8選手が出場。23日のハワイ大会で初戦、その後に別の大会で準決勝、決勝(ともに日程未定)を行い、暫定王者を決める。