挑戦者のWBA世界フライ級1位ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)が、悲願のベルトをつかんだ。足を使って防御に徹する王者アルテム・ダラキアン(36=ウクライナ)にプレッシャーをかけ続け、ジャッジは最大10ポイント差と支持し、判定3-0で新王者となった。岡山のジム所属では初、同県出身でも元WBC世界バンタム級王者の“カリスマ”辰吉丈一郎以来となる大きなタイトルを手にした。

     ◇    ◇    ◇

「岡山から世界王者を」の夢を追い続けた倉敷守安ジムの守安竜也会長(70)にとって感無量の瞬間だった。

試合後、ユーリ阿久井から「会長へ」と渡された世界王者のベルトを腰に巻くと、自然とファイティングポーズになった。

元日本スーパーライト級王者の会長が、私財を投じて1987年に農地の一角でジムを立ち上げた。同ジムから元東洋太平洋ミニマム級王者ウルフ時光が2度、世界戦に挑んで敗れた。世界戦の興行を行うために大きな借金を抱えても挑戦を続けた。

「最高峰の世界チャンプを作りたい。成し遂げるまではあきらめることはできない。(ユーリ阿久井は)上を狙える素材とは思っていたが、世界タイトルまでいけるとは思っていなかった」。ユーリ阿久井の父一彦さんは、ジム初のプロ選手だった。父子2代で会長の、岡山県民の悲願を現実にした。「最高の思いです」。その声には歓喜の涙が重なっていた。