日本のトップ格闘家が監督になり、次代の格闘技界を担う若手選手を推薦し、トーナメントで競わせるABEMAオリジナル番組「格闘代理戦争-THE MAX-」が、いよいよ19日に準決勝を迎える。
今大会の種目は総合格闘技(MMA)で、準決勝の組み合わせは
▼準決勝
中村京一郎(岡見勇信&中村倫也監督)
VS
ギレルメ・ナカガワ(クレベル・コイケ監督)
▼同
中谷優我(青木真也監督)
VS
トミー矢野(イゴール・タナベ監督)
となった。
異色なのが岡見勇信&中村倫也のUFC戦士コンビが推薦した中村京一郎(25)。高校までは野球部に所属し、甲子園まであと1歩のところに迫ったが、格闘技経験はなし。「バックボーンは野球」だという。高校卒業後は海上自衛隊に入隊。もともと好きで見ていたという格闘技を本格的に始めるために21年夏に上京した打撃が得意のストライカーだ。中村が日刊スポーツの取材に応じ、今大会や今後の展望などについて語ってくれた。(聞き手・千葉修宏)
-中村選手はストライキング能力が高いという評判だが、それ以外の部分については?
中村 最近はむしろグラウンドの練習に重きを置いていて。結構、言われているのが打撃は感覚、才能があるタイプと、努力してうまくなるタイプがいるんですけど、寝技は年数と触れ合う時間がすごい必要だと思うんで。そっちに時間をさいています。まだまだですけど、ちょっとずつ良くなってるなって実感しますし、決められてたのが0本になったり、自分が1本取る、2本取る、みたいな展開が練習でも多くなってきたんで。イロハを覚えてきたぐらいの感じですかね。
-監督の岡見勇信選手が、中村選手は心がとても強いと言っていた。それは高校野球で培ったもの?
中村 野球やってた頃は強制的に(やらされていた)。たぶん違うアングルの精神面の強さ、「耐え」とか「しのぎ」みたいなのはそこで培ったんすけど。今の僕のメンタルの強さはそこじゃない。「どういう気持ちでMMAやってるの?」みたいな根本的な部分を理解して。試合で緊張感はあるんですけど、前提として本当に格闘技好きでやってる。この自分の人生で格闘技で楽しく生きるんだっていうのを前提にやってるんで。試合も楽しいし、相手が強い方が楽しいし。
-監督の岡見選手と中村倫也選手は耳の痛いことも言ってくる?
中村 岡見さんは多分、本当に僕と違う格闘技スタイルっていうか。試合に入る時も、岡見さんからしたら多分、考えられない、理解できないみたいなところがあるんで。自分と違うと思ったことはどんどん言ってくれますし、厳しいことも言ってくれる。倫也さんとは、めし食ってても「今、その動きやりてえ」ってなったらめしを1回置いて、カフェとかで組んじゃう。そういう感じなんですよ僕ら(笑い)。もう全然テラス席とかでも「この間のあれ、やばかったよね」みたいに、コーヒー飲みながらやっちゃったりするんで。
-一部ネット上の情報でファイターズ・ジュニア(プロ野球・日本ハムによる小学生の選抜チーム)にいたと書いてある
中村 それどこに載ってるんですかね? 違うんですよ、ファイターズ・ジュニアのオーディションは俺、1次で落ちてますから。小6のときに。キャッチャー選考で行ったんですけど、肩が弱くてダメでした。
-高校(北海道栄高)の野球部ではどのくらいまで進出した?
中村 僕が3年生のときが多分一番強かった年代なんです。(秋と春の)県大会の決勝に2回行って、どっちも負けちゃったんですよ。(秋は)勝ってたら甲子園だったのに。夏はベスト8だったんですよ。悔しかったなあ。
-でも勝ってたら、野球で大学に進学して、違う人生になっていたかも
中村 最近、それ思うんですよ。俺、キャプテンと一緒のポジションだったんす。俺の方がうまかったんですけど、監督にキャプテンだからスタメンで出すって言われて。ちょっと待って、俺3年間、何しにきたの? みたいな。立場だけで負けちゃうんだ、みたいな。ちょっとグレましたね。もう高校で野球はいいかな、燃え尽きちゃった、みたいになりました。でも今、考えたら野球はおやじが好きだったんでやらされてたんですけど、今、野球見ないですし、俺あんまり好きじゃなかったかも知れないって。惰性で小1からずっとやってたっていう感じで。たぶん格闘技に呼ばれてたんですよ、俺。野球でスタメンで出てて、大学に行ったら、社会人野球に行く流れじゃないですか。
-海上自衛隊に入ったのは?
中村 実家が花屋で。花屋をつぐか? みたいな話になったんですけど、北海道からちょっと出てみたいと思って。いろんな世界を見たいというので公務員試験を適当に受けてたんですけど、たまたま受かって海上自衛隊に行くわってなって。道外にやっと出られた、やっと関東に来られたっていうところでいろんな刺激にもまれながら、3年やって(自衛官を)辞めたぐらいから格闘技を始めました。
-昔から好きだった格闘家は?
中村 格闘技は小学校から見てたんですけど(エメリヤーエンコ)ヒョードルとミルコ(クロコップ)がずっと好きで。「こいつやべえな」みたいな。まず「体でかくね?」って。でかいって、遅いのイメージなんすよ。でもヒョードルも瞬発力クソある。その時代がちょっと終わっていって、キッドさん(山本徳郁)が出てきて。野球部ってずっと丸刈りじゃないすか。サッカー部にジェラシーがあって。「髪あるじゃねえか、あいつら」みたいな。でもキッドさんは「丸刈りでもかっけえな」って。男は髪じゃねえって。キッドさんは生きざまも格好良かったんですよ。
-プロになってから初戦(LDHマーシャルアーツ・狩野優戦、3R肩固めで敗戦)だけ負けている
中村 格闘技をなめてましたね。アマチュアの時もプロ何戦かしてるやつとか全然倒してたんですよ。そのとき酒もめっちゃ飲むし、タバコも吸ってたんです。やっぱケンカのノリで、MMAを競技として見てない。レスリングとかグラップリング強いからなんだよ、パンチでいけんだろ、っていうのがモロに出た試合でした。何カ月か前にその時の試合をたまたま見る機会があって。まずディフェンスを知らないから、動きも今の僕からしたら、「いや、これは負けるわ」みたいな。組みの動きを知らなかったのと格闘技をなめていた。試合前にめっちゃ相手をあおったんですけど、イラつかせたら打撃やってくれるんじゃないかって、なめてましたね。調子こいてました。
-それが競技としてMMAを理解してきた
中村 (MMAはケンカとは)全然違うし、5分ですから。5分の3ラウンド、UFCのタイトル戦だったら5分5R。ケンカスタイルでももちろんいいと思いますけど、それって寝技を全部知ってて、決められないっていう前提のもと、打撃でいってるんですよ。柔術黒帯とか、レスリングがめちゃ強いとか、ベースがあった上で打撃のケンカができるんで。今は寝技に重点を置いて、自分の好きな打撃するためには、そこもやるし。最近はグラップリング超楽しいんで。めっちゃ好きです。極めて勝つみたいなのが、ありますよ。まだ出してないこともいっぱいあるんで。
-次の展望は
中村 今年、格闘代理戦争で優勝して。3カ月連続で試合してるんで、内臓疲労もあると思んで、ちょっとその後は2、3カ月様子を見ながら、年にあと1、2試合できたらいいなって。来年はベルトを持っているかどうかで変わると思うんですけど「Road to UFC」に出るのもそうですし、成績が良かったらアメリカで練習して、コンテンダー(選手のスカウトを目的としたUFCの大会。ESPN+で放送されている)があるかもしれない。あと3、4年でUFCを主戦場に試合をしてるっていうのがベストですね。ちゃんとやればUFCに行けるのは分かってるんで。UFCに行って勝つのが大事なんで。入るだけなら何の意味もないんで。そのために、じゃあこの2、3年をどうしようかって考えています。