「だけん、なんや」。
相手がどれだけ実績のある実力者でも関係ない。「だから何?」「それがどうした?」と、気後れせずに立ち向かい、15歳の少年が初タイトルを手にした。9月29日、東京・立川市で行われた小・中・高校生のボクシング全国大会「ジュニアチャンピオンリーグ」。そのU-15(15歳以下)50キロ級で、望月大和(熊本市・二岡中3年)が初優勝を飾った。
「これまでは、あと1歩のところで負けていたので。全国大会で初めて勝てて、とてもうれしかったです」
ハキハキとした口調で語る少年の顔立ちには、あの女子プロゴルファーの面影がある。望月の母の姉は、08年に賞金女王に輝いた古閑美保(42)だ。「おばさんは、いつも応援してくれてます」と感謝する。そして、「だけん、なんや」と勝負根性を植え込んでくれたのが祖父、つまり古閑美保の父宏二郎さん(63)だった。
ジュニアチャンピオンリーグでもセコンドについて孫を励まし、3-0の判定勝ちへと導いた宏二郎さん。実は自身も17歳のころから数年間、ボクシングに打ち込んでいた時代があったという。「プロの4回戦ボーイには勝ったこともありましたよ」と若かりしころを思い浮かべた。
宏二郎さんと言えば、娘美保の幼少期に野球を教え、男子に負けないようスパルタ指導で鍛え上げたことは、有名な話だ。自宅近くの川に体を沈めて素振りさせたり、ロープを腰にくくりつけ上流へ向かって歩かせたり…。「『巨人の星』の星一徹と星飛雄馬のような感じでした」。
そんな宏二郎さんだからこそ、娘の少女時代と同じように、孫の大和にも熱血指導を施している。
「最初は将棋をさせていたんだけど、藤井聡太くんに勝つのは無理かな…と思ってね。5歳の時に野球のバットも買ってティーバッティングさせたけど、あまり興味を持たなかった。でも、男らしく育てたいと思っていたからね。それで小学2年生の誕生日に、トイザらスに行って子供用のサンドバッグをプレゼントしたんですよ」
すると、孫は楽しそうにパンチを打ち込んだ。その姿を見た瞬間、「何か持ってるモノがあるかも。もしかしたら…」と将来性を感じとったという。そこから、孫へのマンツーマン指導が始まった。学校が終わって、宏二郎さんの家に帰ってくると即練習。サンドバッグはいつしか、リビングルームに鉄骨でつるされていた。動体視力を磨くために卓球もさせた。ボクシングと同じく1対1で戦う剣道も体験させた。「もう1万時間以上、一緒にやってますよ」と笑う。
ボクシングで最も重視しているのが「打たせず、打つ」ことだ。「ディフェンス技術を磨かないとね。危険なスポーツだから。10歳でも80歳でもパンチを打つことはできるけど、よけることはなかなかできない」。その信念のもと、防御術を徹底させた。サウスポーにしたのも、相手に攻めにくくさせるためだ。食事でも箸は左手で持たせて「左」を強化している。時には、長谷川穂積や山中慎介など元世界王者のもとを訪ねて指導を仰いだこともあった。すべては孫のため。そんな祖父の熱意、情熱を孫も受け止め、順調に成長し、中学最後の大会で勝利をつかんだ。
祖父と孫の夢は、これからも続いていく。「高校になったら、いろいろなスポーツで体を作り上げたいね。今後のベースになる体力を蓄えたい。そして17歳でプロテストを受けさせたいね」と宏二郎さんは今後の道筋を思い描く。大和も「将来の目標は世界チャンピオンです。打たせずに打つ、(ワシル・)ロマチェンコのようになりたい」と、五輪金メダリストでプロでも世界3階級制覇を成し遂げたスーパースターの名前を挙げた。
11年に女子ツアーを“引退”した古閑美保も「とっても優しくて、穏やかないい子なんです」と、おいっ子の性格にほれこみ、全力での“後方支援”を誓っている。
熊本から日本一、そして世界へ。祖父の情熱、おばの期待とともに、15歳の大和少年は、大きな夢へ向かって歩みを進めていく。

