大相撲の横綱白鵬(32=宮城野)が関脇玉鷲を寄り切り、通算勝利歴代1位となる魁皇の1047勝に並んだ。01年春場所の初土俵から、魁皇より42場所早く達成。唯一の1敗を守り、早ければ明日14日目に2場所連続39度目の優勝が決まる。モンゴル出身の大横綱は近い将来、日本国籍を取得する考えを持っていることが、関係者の話で分かった。日本国籍を取得できれば、引退後は親方として日本相撲協会に残る見通しが立つ。

 ついにこの瞬間が訪れた。土俵下には元大関魁皇の浅香山審判員が座っていた。白鵬は「見えたけど下向いてた」と振り返るほど落ち着いていた。ただ「落とせない気持ちだった」。激しい右のかち上げに、力いっぱい左右の張り手。前日の負けを拭い去るように寄り切った。「言葉に言い表せられない。去年1年間苦しいものがあった。それが大記録につながった。一味も二味も味がおいしい。すんなりきたら、ここまではなかった」。表情は穏やかだった。

 角界のトップを走り続け、すでに将来を見越しているようだ。白鵬は公の場で明言していないが、関係者によると近い将来、日本国籍を取得する意向だという。父ムンフバト氏は、モンゴル初の五輪メダリストで国民的英雄ということもあり、息子の国籍変更は同国では想像以上の大問題。モンゴル国籍のままでは親方になれず、大相撲への思い入れが強い白鵬は悩み続けてきた。

 取得すれば、年寄名跡を取得するために必要な条件で唯一、満たしていなかった「日本国籍を有する者」をクリアする。すでに史上1位となる38回の幕内優勝を果たしており、日本人になれば日本相撲協会から「一代年寄」を贈られる可能性は高い。著しい功績があった横綱だけに与えられるもので、引退後も現役時代のしこ名のまま「白鵬親方」として弟子を指導できる。