7年ぶりに平幕に落ちた元大関の琴奨菊は新入幕から76場所目で昭和以降最も遅い初金星を獲得した。

 初金星は、図らずもあっけなく訪れた。「待った」をアピールして力を抜いた日馬富士に対して、琴奨菊は最後まで力を抜かなかった。「自分が決めることじゃない。ああいう相撲になったけど、しっかり上手を取る準備をしていた」。それは集中力の表れだった。元大関としては昭和以降10人目となる金星を「素直にうれしい」と受け止めた。

 大関昇進前に金星はなく、33歳7カ月の初金星は58年以降2番目の年長記録。新入幕から76場所目の初金星は昭和以降最長だ。それらは現役を続ける決断をしたからこそ生まれた。

 10勝すれば大関に戻れた春場所は、1勝足りなかった。それでも「優勝を目指せなくなったら辞める」。だから現役を続けると決めた。元大関の誇りを周囲は気にするが「そこを言い出したらきりがない。チャンスは全然ある。輝ける場所はある。違った輝きもある。応援してくれる人にしか分からないものもある。そこを伝えられたらいい」。

 陥落後に関脇以下で優勝した力士は平幕優勝の魁傑1人。そこに挑む。3横綱1大関が不在となって荒れる中、1横綱2大関を倒しての3連勝。33歳の元大関が鈍い輝きを放っている。

<琴奨菊の初金星の記録>

 ◆年長初金星 33歳7カ月は、年6場所制となった58年以降の初土俵で2位。1位は豪風の35歳1カ月。

 ◆初土俵からの最長初金星 94場所目は昭和以降の新入幕で4位。1位は玉龍の102場所で、2位は大潮、3位は貴ノ浪。

 ◆新入幕からの最長初金星 76場所目は昭和以降の新入幕で1位。2位は豪風の68場所目。