西前頭9枚目豊山(24=時津風)が、結びの一番で高安を押し出し、大関から初白星を挙げた。

 「最高ですね。(高安は)張るか、左差しか、どっちかだと思ったけど、そこはかまわず“前に出よう”と。当たった瞬間に“ここだ”と思って、前に出られた」

 場所前に、いつも稽古をつけてもらっている相手だけに「恩返しじゃないですが、ちょっとは期待にこたえられたかなと思います」と声を弾ませた。

 優勝争いでトップを走っていた御嶽海と2差の3敗でこの日を迎え、自分の2つ前の取組で御嶽海が優勝を決めていた。千秋楽は御嶽海と直接対決だっただけに、御嶽海が負けていれば、自力で優勝決定戦に持ち込む展開もあり得た。だが、本人は自分の取組に臨む時、失望感はかけらもなかったようだ。

 「今日までいい夢を見させてもらいました。自分はまだまだそういう目標(優勝)は早い。それよりも優勝が決まった異様な雰囲気の中で、自分の気持ちを押し殺し、しっかり気持ちを作って集中できた。それが大きな収穫です」

 これで11勝3敗。幕内6場所目にして自己最多の白星を奪った。「これから先の相撲人生の中で、すごく大きな意味がある一番だったと思う。明日も優勝力士が相手、千秋楽で“これより三役”も初めて。頑張って、いい経験値にしたい」と充実しきった笑顔を見せた。