6戦全勝で2人が並んだ序ノ口の優勝争いは、両者とも勝てば二子山部屋力士による千秋楽優勝決定戦に持ち込まれたところだったが、序ノ口デビューの狼雅(19)が勝ち、その一番後に序二段の土俵で取った藪岡(20)が敗れたため、狼雅の優勝が決まった。

西の花道奥の通路で、藪岡の取組を確かめた狼雅は「優勝決定戦をしたかったけど、うれしい。いいスタートを切れました」と笑みを浮かべた。母ドランナンさんの故郷であるロシア・トワで生まれ育ち、14歳まで過ごした。「モンゴル語を勉強したい」と国を越え、モンゴルへ。ロシアでは柔道、レスリング、モンゴル相撲に似た相撲の経験があり、モンゴルに渡ると横綱白鵬が主催する「白鵬杯」に出場。そこでスカウトされ15歳の2月に来日。そのまま鳥取城北高に入学し、一昨年夏の高校総体決勝では、朝青龍のおいにあたる現幕下の豊昇龍に勝ち、外国出身として初の高校横綱に就いた逸材だ。

国籍はモンゴルだが、滞在は1年あまりで「急にモンゴル人と言われても…」とロシアへの郷愁の念は強い。「今場所は右の前みつを取るという形を作っての相撲が取れた」。高校相撲と比べると「高校(の大会)は1日で全てが終わる。プロは失敗しても動画を見たりして(翌日に)直せる」と精神的にもプロ向き。昨年4月から二子山部屋での生活を始め、約半年間の「研修期間」を経て、昨年11月の九州場所で初土俵。番付に初めてしこ名が載った実質的な「プロデビュー」の場所で幸先いいスタートを切った。

◆東23枚目 本名アマルトゥブシン・アマルサナー。モンゴル・ウランバートル出身。18年九州場所初土俵。183センチ、135キロ。得意は右四つ、寄り。