小結朝乃山(25=高砂)が、2020年の主役に名乗りを上げた。西前頭10枚目の正代に敗れ、今場所を11勝4敗で終えたが、最後まで優勝した横綱白鵬と賜杯を争い、初の技能賞を受賞。

評価された右四つの型に磨きをかけて「今の番付よりも上を目指していきたい」と次の大関に立候補した。年間最多勝にも輝いた「未完の大器」が東京オリンピック(五輪)イヤーの角界を引っ張る。

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最後の最後に「未完の大器」ゆえのもろさが出た。朝乃山は、正代に左上手を取られると、右を差したが防戦一方で寄り切られた。取組前に右四つからの寄りを評価され、初の技能賞受賞が決まった。取組後は「それだけ右四つが評価されるようになった。でも今日も右四つになれなかったのは、まだ完成していないということ。全然ヘタクソ。もっと右四つを磨いて目標とされる力士になりたい」と断言。今後を見据えた。

技能賞に推薦した審判部の高島部長代理(元関脇高望山)は、取組前に「11番と12番では大変な違いがある」と話した。三役で3場所合計33勝の大関昇進の目安について、正代戦に勝っていれば、前頭2枚目で10勝した先場所を起点扱いとする考えをほのめかした。11勝止まりとなり、ややトーンダウン感はあるが、最近では15年夏場所後に昇進した照ノ富士の起点が平幕の8勝だった例もある。来場所で優勝争いに加われば、一気に機運が高まり、昇進する可能性も十分だ。

かねて八角理事長(元横綱北勝海)は朝乃山について「来年は1つ、2つ上を目指せるのでは」と話し、大関、さらには横綱に成長する大器と見込んでいる。誰よりも朝乃山自身、来年の飛躍を信じて疑わない。

朝乃山 来年が勝負だと思う。今年は充実した1年だったが、来年も充実の1年にしたい。今の番付よりも上を目指していきたい。

師匠の高砂親方(元大関朝潮)からは「三役で2ケタ勝たない限り『大関』とは口にしちゃいかん」と厳命されていた。それを達成し、初めて口にした“今より上”について「大関のことか」と問われた朝乃山は「かもしれない」とニヤリ。東京五輪が行われる来年、スポーツ界が注目されるが「注目されたら、よりいっそう頑張らないといけない」。角界の顔となることも歓迎だ。【高田文太】