再十両を目指す東幕下2枚目の豊ノ島(36=時津風)が、1年半ぶりに陥落した幕下の土俵で今場所初白星を挙げた。

十両の初口(しょっくち=各段の最初の取組)で西十両14枚目の明瀬山(34=木瀬)と対戦。当たって突き放し、何とか中に入ろうとタイミングを計るが、相手もそうはさせじと押しの応酬。だが、動きの中でほどなくして右が入る。明瀬山が入れられた左をきめながら前に出るところで体を右に開き相手の左腕をたぐるように、おはこの肩すかしを引いた。「決める感覚で、久しぶりに“きたっ”て感じだった」とイメージ通りに伝家の宝刀を抜き、あとは相手が転がるのを待つだけ。「ボロボロの刀で抜いた。さびれても、まだ少しは切れがあったかな。(相手が)転がるのが(イメージできた)ね」と、柔和な笑みを浮かべながらジョークを交えて振り返った。

十両力士からの白星は“入れ替え戦”の意味合いを持つようになれば、あとあとになって貴重な1勝となる。ただ、豊ノ島本人は十両での土俵を意識せず自然体で臨んだ一番だった。幕下力士でも、十両での土俵では例外として大銀杏(おおいちょう)をつけて臨むが「それも忘れていたし(許される)タオルを持っても行かなかった。十両での土俵とかに、とらわれないで取りました」という。

歴史的な無観客開催での土俵も「昨日は初めてだったし緊張したけど、2日目になって気にならなくなった」と、いい意味で慣れてくるようだ。星を1勝1敗の五分に戻し「あとは楽しんで取れるように」と3番相撲以降を見据えた。