1年4カ月ぶりの地方開催となる大相撲名古屋場所(7月4日初日、ドルフィンズアリーナ)で、17年九州場所以来の返り入幕が確実な十両宇良(28=木瀬)が7日、都内の部屋での朝稽古後、報道陣の代表取材に応じた。

この日は志摩ノ海、徳勝龍の関取衆に、幕下力士を加えての申し合い稽古。志摩ノ海に1勝1敗、徳勝龍に1勝し合計5勝4敗で終えた。稽古は、いつも通りのペースといい、体の動きも「いつも通りじゃないですかね」と変化はないようだ。

場所開催が東京五輪に重ならないよう、通常は第2日曜日の初日が第1日曜日となり、必然的に夏場所千秋楽からのブランクが1週間早まる。新型コロナウイルスの感染防止の観点から、名古屋入りも場所直前と、通常とは異なる場所になるが「気にしてないです」と意に介していない様子だった。

西十両2枚目で臨んだ5月の夏場所は、12勝3敗で十両優勝し、再入幕は確実だ。右膝の大ケガによる2度の長期休場で、一時は西序二段106枚目(19年九州場所)まで番付を落とした。そこからはい上がり、16場所ぶりの関取復帰、そして目前には21場所ぶりの幕内の土俵が待つ状況だ。それでも胸の高ぶりはない。「体が持つかどうか心配。十両と幕内は、そりゃあ違うでしょうね」と言う。関取復帰から15日間、相撲を取る十両の土俵も4場所経験しているが「15日間、十両でも、休まないにしても(体が)持ってない」と、体力的にはもちろん、いつまたケガに見舞われるかもしれない…という恐怖心とも闘う宇良。そして幕内の土俵は「楽しみはないです」と言い、楽しみという力士を「天職なんでしょうね。そこ(幕内)で取れるのは、うれしい(けど)楽しみにはならない。相撲は好きだけど、楽しいと思って土俵には上がらない。『いいなあ』『すごいな』とは思うけど」と独特の表現で語った。

ただ、その幕内の土俵に戻ることは「戻れると思っていなかった。(稽古で)こんなに負けてて」と吐露した。そこまで、はい上がってきたことには「頑張って良かった」と自己評価。復帰までの足取りを振り返り「残りの相撲人生において、運が良かったら関取に1度でも挑戦できるところにいけたらな、と思っていました。幕内じゃなく(関取と呼ばれる)十両。十両に戻った時はうれしかった」と語った。

4年前の名古屋場所では、唯一の金星を横綱日馬富士から、とったりで奪っているが、その感想は「特にないです」とし「出るからには勝ち越しを目指してやるけど、そこまでの目標はない。勝ち越せるように頑張りたい」と目標も現実的。幕内上位のころは「技能賞を取るのが目標だった」というが、今は「目標にはならない。自分が決めることではなく、認められてのものだから」と足元を、しっかり見つめて名古屋場所に臨む。