照ノ富士の横綱昇進や、白鵬(現間垣親方)の現役引退など、今年の大相撲は話題豊富な1年となった。新型コロナウイルス禍でさまざまな制限が敷かれる中で、土俵上では多くのドラマが生まれた。年6場所で幕内を務めた力士が対象の「第10回日刊スポーツ大相撲大賞」は、独自調べで発掘した好記録や珍記録を表彰する。第2回は大栄翔(28=追手風)の「上位キラー賞」。

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三役以上と年間15番以上戦い、最も勝率が高かった平幕の大栄翔が「上位キラー賞」に輝いた。初優勝を果たした1月の初場所では初日から3大関(朝乃山、貴景勝、正代)を撃破するなど、計14勝14敗の勝率5割。「どんな相手でも気持ちは一緒だけど、横綱、大関が相手の時はいつもより思い切りいこうと思う」と熱が入った結果がつながった。

中でも、9月の秋場所で横綱照ノ富士から金星を奪ったのは特別な一番だ。初日から無傷の8連勝で勢いに乗る新横綱を、のど輪とはず押しで攻め立てて寄り切った。「あの相撲はすごくうれしい。前に出る相撲が取れたし、すごく自信になりました」と、自身3個目の金星の味は今でも忘れられないようだ。

一方で「うれしいんですけど…」と複雑な心境も口にした。最高位は関脇。3月の春場所では小結への返り咲きを果たすも定着できなかった。「もともとは三役だった。やっぱりそこに戻りたい気持ちが強い」と意欲をにじませ、「まだまだ強くなりたいと思う1年だった。もっと立ち合いを磨いて、どんな相手でも負けないようにしたい」と気合を入れた。【佐々木隆史】