伝説の大横綱以来の新関脇Vもあるか。若隆景(27=荒汐)が全勝で走っていた高安を寄り切り、優勝争いトップに並んだ。新関脇で優勝を飾れば、1936年(昭11)5月場所の双葉山以来86年ぶりの快挙となる。関脇で2桁勝利は大関どりの起点となり、今場所の主役に躍り出てきた。大関貴景勝は1敗だった平幕の琴ノ若を突き落とし、勝ち越してかど番を脱出した。

若隆景「自分の相撲」もろ差し寄り切り全勝高安に土 新関脇2桁星1敗並んだ/11日目写真特集>>

けれんみのない真っすぐな相撲で全勝力士を引きずり下ろした。「下からよく攻められたと思います」と若隆景。高安の立ち合いをしっかり受け止め、右から強烈なおっつけで浮き上がらせ、さらに左からもおっつけを見舞ってもろ差し。あとは出るだけだった。

体重130キロは幕内で軽量の部類に入る。183キロ(公式は177キロ)の高安とは50キロ以上も違うが、その重さをまるで感じさせない。取組を見ていた兄の若元春が「(高安は)僕も対戦して重かったのに、下半身の安定がすごいある。横に振っても崩れない」と弟の相撲に感心しきり。肉親でも驚く成長だった。

「体が小さいんで、下からという意識でとっています」と常々話す。体重差を補うのが強靱(きょうじん)な下半身、そして上半身だ。体つきが変わってきた。首から肩にかけた筋肉を僧帽筋(そうぼうきん)という。英語では「台形」を意味する部位が、一流のレスリング選手のように首が埋まるほど盛り上がってきた。この鍛え上げた上半身が最大の武器、おっつけの破壊力を増している。

大関どりの起点となる関脇で2桁勝利、優勝争いでトップに立った。この勢いで賜杯を手にすれば、新関脇では大横綱双葉山以来86年ぶりという伝説に並ぶ。ただ、若隆景は「まだ残りがあるんで。集中してやっていきたい。一生懸命、相撲をとっていきたい」と大きなことは口にしない。

故郷の福島は場所中、地震に見舞われた。実家のちゃんこ店も被害を受けた。多くの人を勇気づける若隆景の活躍が、優勝の行方をカオス(混沌=こんとん)に陥れた。【実藤健一】

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