小結豊昇龍(22=立浪)が「朝青龍ばり」の鋭い出足で関脇阿炎に完勝した。突き放せば強い相手を素早く組み止め、一気の出足で寄り切った。元横綱朝青龍、ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏のおい。元横綱白鵬の間垣親方から「出足の鋭さがおじさんに似てきた」と太鼓判を押された。全勝が消え、1敗も平幕2人。横綱照ノ富士ら2敗組に残った豊昇龍も主役候補に浮上してきた。

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陸上短距離選手のような“スタートダッシュ”が鮮やかに決まった。長い手足で放つ強力な突き押しが武器の阿炎に豊昇龍は何もさせなかった。潜り込んで右を差し、強引な上手投げをもろともせず一気に寄り切った。「(タイミングを)少しずらしていきました。よかったと思います」と会心の相撲を振り返った。

取組後はサプライズ。この日はNHKが特別中継で元横綱白鵬の間垣親方がインタビュアーとなった。「びっくりしました。うれしいというより、緊張するんで」。その大横綱から「鋭い出足はおじさんに似てきたね」と評価された。

おじの元横綱朝青龍も体は大きくなかったが、立ち合いの出足と負けん気の激しい気性で25回の優勝を積み重ねた。豊昇龍もおじの現役時代の動画を何度も見て研究している。そのあこがれの領域に少しでも近づいてきたと、優勝45回の大横綱に太鼓判を押された。「(言葉は)力になります、もちろん」と感謝した。

「体を大きくしないと(幕内上位で)戦えない」と夜食作戦で増量に取り組む。今年1月は130キロ台前半だった体重も、今場所前は141キロまで増やした。「急に増やしたわけではなく徐々に。順調に増えている」と手応えを隠さない。

混沌(こんとん)の優勝争い。1敗は平幕2人、2敗も横綱照ノ富士ら7人だけで、その位置に豊昇龍も残った。朝青龍の「血」を系譜する伸び盛りの22歳。勢いは侮れない。「(ここまで5勝2敗は)いいんじゃないですかね。自分自身は1日一番と思っているんで」。残り8日間を盛り上げる。【実藤健一】

【7日目写真特集】全勝消え、優勝争いは混沌 照ノ富士が相撲巧者遠藤下す、貴景勝は玉鷲を一蹴