ユーミンは、相撲界ともつながりがある。シンガー・ソングライター松任谷由実(69)が昨年7月にデビュー50周年を迎え、今年も新潟・苗場プリンスホテルで冬恒例のリゾートコンサートを開いている。元大関栃東の玉ノ井親方(46)は、ユーミンと交流を深めてから25年になる。

ユーミンの50周年記念展「YUMING MUSEUM」(ユーミン・ミュージアム)は26日まで東京・六本木で開かれており、各界著名人からのメッセージとリクエスト曲が展示されている。玉ノ井親方にもオファーが届き、「真夏の夜の夢」をリクエストした。

親方にとって、この曲には忘れられない思い出がある。25年前の1998年7月。コンサートの合間を縫って、ユーミンが名古屋場所を観戦に訪れた。その夜、関係者が知り合いだったつてで玉ノ井部屋を訪れ、一緒にちゃんこを食べ、スナックにも行った。親方は当時、21歳。すでに関脇を経験していたが、この場所は平幕だった。

スナックでは、栃東がリクエストした曲「真夏の夜の夢」と「まちぶせ」をカラオケながら、ユーミンが振り付けで歌ってくれた。「まだデンモクではなく、本で曲を選んでいたころ。ユーミンさんは本(の曲名)を見ながら『私って、こんなに歌ってたの』ってびっくりしていた。プライベートで来てくれたんだけど、歌ってくれた時は衝撃的でした」。

その5日後、栃東は横綱曙を倒し、初めての金星を挙げた。真夏の夜の夢だった。

交流は続き、その2年後の2000年、ユーミンから持ちかけて、栃東の浴衣地をデザインしてくれた。YMをあしらったユーミンマークも入っていた。さらに2年後、栃東は大関に昇進。師匠でもある父(元関脇栃東)の番付を超え、夢をかなえた。祝賀会に、ユーミンも駆けつけてくれた。2003年には、新曲「雪月花」の文字が入った化粧まわしを贈ってくれた。引退後、2008年の断髪式にも来てくれた。

相撲人生の節目を、ユーミンが彩ってくれた。近年はコロナ禍で会えないが、電話やメールのやりとりがあり、アルバムも送ってくれる。

「ユーミンさんは年々、魅力が増してくる。今も第一線で頑張っているのはすごいこと。昔から何でも楽しんで、コンサートもスキーも楽しんでいました。いつみても若々しい」。以前は苗場のコンサートに行き、一緒にスキーを楽しんだこともあるという。

今もあらゆる場所でユーミンの曲は自然と耳にする。栃東は玉ノ井親方となり、師匠として20人を超える力士を抱えている。35歳の部屋頭、東龍が初場所で、幕内10場所目で初めて勝ち越すという明るい話題もあった。

「強いお相撲さんを育てるのが一番だけど、こういう時代だからこそ人間を育てることはすごく大変で、大事。そういうことをすごく考えます。社会勉強として、礼儀作法を教えることも大事にしているところです」

「真夏の夜の夢」のリリースから、今年で30年。あの夜の衝撃は忘れられず、今は親方としての夢を追っている。【佐々木一郎】