コロナ禍から何とか抜け出そうと、相撲界も土俵際で懸命に踏ん張っている状況だと思います。そんな中で迎えた名古屋場所は、横綱、大関の2人の休場はあっても全体的に、みんなよく頑張ったと思います。
相撲ファンの最大の注目は、3関脇の大関とりでした。抜け出すと思っていた豊昇龍が自分の相撲を貫いて昇進を確実にしました。引く場面があまりなく、自分を貫く一方で周りの声にも耳を傾けながら過ごしたのが初優勝にも結び付いたと思います。一方で今回、昇進を逃した2人は、自分に足りないものが補えていません。大栄翔は、相手に手を手繰られた時の防ぎ方が出来ていません。若元春は立ち合いです。人それぞれ心に問題を抱えた時、どう克服するのか。体を鍛えるのはアスリートとして当然のこととして、必死に考えることが求められます。大関への道が閉ざされたわけではありません。豊昇龍の後に続けるように頑張ってほしいです。
その2人から10歳も年下の伯桜鵬は、個人的に最大の注目でした。同じ新入幕で13勝を挙げ千秋楽まで優勝争いをした逸ノ城のような大活躍をするのでは、と場所前のこのコラムの展望でも書きました。そうは言っても、うまくいけば12日目あたりまで…と内心、思っていたのですが、そんな予想をはるかに超える結果を残しました。初土俵から3場所だけですが、ここまでの相撲内容から十分、幕内でも通用すると思っていたし、本人も入門時点で自信があったのでしょう。細かい技術評は本場所の評論で触れましたが、勝負度胸の良さが一番の武器です。テレビで見ていた力士を目の前にして、おじけづいてもおかしくないのに、千秋楽で対戦した豊昇龍にも目をそらさずにらみ付けた、あの度胸の良さです。その豊昇龍に大相撲の世界に入って初めて「壁」を感じたのではないでしょうか。負けて覚えるのも相撲です。今場所の15日間の相撲で、他の力士に相撲を覚えられたはずです。それでも入幕2場所目の秋場所は、それなりの成績は挙げられると思います。豊昇龍に負けた後、きちんと頭を下げて一礼したように、謙虚な気持ちを忘れないことです。あの相撲を取れるのは今の日本人にはいません。ケガさえなければ横綱には上がると思います。
最後に恒例となった? 独自で選ぶ今場所の三賞です。三賞選考委員会の選出とは少し異なりますが、あくまでも私なりの選出なのでご理解ください。殊勲賞は豊昇龍、伯桜鵬と北勝富士の3人。敢闘賞は錦木、伯桜鵬、豪ノ山、湘南乃海の4人。技能賞は伯桜鵬。ということで伯桜鵬は三賞総なめです。豊昇龍はベースがレスリングで粘り腰の良さと、相手の悪い体勢を利用しての投げが得意ですが、技能賞となるとまだまだ。ここは伯桜鵬しか見当たりません。では皆さま、猛暑が続きますが、お体には気をつけて秋場所を迎えてください。(日刊スポーツ評論家)

