大相撲の大関経験者で東前頭12枚目の朝乃山(30=高砂)が、イメージ一新の鮮やかな締め込みで、名古屋場所(14日初日、ドルフィンズアリーナ)に臨む。12日、愛知・蟹江町の部屋での稽古で、明るい緑色の締め込みを初めて着用。これまでは黒、紫と、落ち着いた色合いの締め込みで本場所や巡業に臨んでいたが、全く異なる系統の色で今場所を戦い抜くことを決めた。稽古後、当初は報道陣に「これ、似合ってないですよね?」と、自信なさそうにたずねていた。それでも「せっかくいただいたものなので、思い切って変えてみようと思って」と、自らに言い聞かせていた。

名古屋場所で使用する新たな締め込みは、後援会関係者から「2020年か21年に」と、大関時代に贈呈されたものだという。その後援者からは、希望の色も聞かれていたが「お任せで」と答え、イメージを覆す締め込みを贈呈された。寄贈者はすでに亡くなっているといい「本当は生きている間に、着けているところを見せたかった」と、無念そうに話した。ただ、1年間の謹慎休場明けで、三段目から復帰して、関取に再昇進するまでは当然、締め込みは着けられなかった。また、関取に再昇進しても、急に鮮やかな色合いにも変更しづらかったようで、締め込みの色は黒、紫を経て、今回に至った。

5月の夏場所は、直前の春巡業で右膝を負傷して全休した。名古屋入り前の6月末には、都内の部屋での稽古で出血、右目上を7針縫う負傷も負った。ただ右膝は「稽古で相撲を取っても問題ない」といい、右目上の傷も今月6日に抜糸を済ませた。右目上は激しくぶつかれば、再び傷が開く危険性があるのはもちろん、右膝も倒れ方が悪ければ再び悪化させる可能性がないわけではない。それでも「下がるとケガするので、前に出ることを意識したい。傷も開いてしまったら、それはそれで仕方ない。怖がっていたら何もできない」と、勇ましく話した。

気力の充実は、約3年ぶりに三役に復帰し、小結として臨むはずだった夏場所を、1日も出場できなかった雪辱の思いの強さに由来する。「5月に出られず本当に悔しかった。だから今は、場所に出られる喜びが強い」。番付は一気に落ちたが「この番付だと10勝以上はしないといけない。勝っていけば、上位とも対戦することになる」と、目標は変わらず、優勝争いに加わることだ。

上位総当たりの番付よりも、優勝争いに加わる可能性は高い番付ともいえる。ただ、先場所十両で優勝した若隆景や、同じく優勝を争った遠藤らの技巧派、玉鷲、正代ら優勝経験のある実力者も近い番付にいるため、一筋縄ではいかない。9日からは、スピードとうまさのある若隆景、左四つの絶対の型を持つ若元春のいる荒汐部屋に3日連続で出稽古し、土俵勘を取り戻すことに尽力してきた。先場所までの6場所のうち、実に4場所で休場。全休は先場所だけだが、ケガが増えてきた嫌な流れを、心機一転の鮮やかな締め込みとともに、好成績で断ち切るつもりだ。【高田文太】