6月17日のAKB48選抜総選挙で起こったNMB48須藤凜々花(20)の結婚宣言から1カ月以上がたった。AKB48グループ取材歴の長い日刊スポーツ新聞記者2人とフリーライター2人が集まり、あらためて「須藤結婚宣言」ついて語り合った。そもそも須藤とはどんな人物で、なぜあのような行動を起こしたのか? 連載4回目。

 A(スポーツ紙記者) あらためて皆さんとは、須藤凜々花という人物について振り返りましょう。我々は、マスコミの中でも、長らく須藤の才能を高く評価して、追い続けていた4人でした。結婚宣言はダメだったと話すCさんは?

 C(フリーライター) 長年アイドルライターを続けている私が感じる1番の醍醐味(だいごみ)は、その子やグループが成長していく過程を見ていけるところで、その究極形がAKB48なんです。今までは「グループ」として売れていくところが見どころだったけど、AKBは1人1人が人間として成長していくという、細部まで目撃ことができるんです。そういう意味では、須藤も子供から大人に…、まだなりきれてはいないけど、その変化を今回で見られたわけです。普通のアイドルでは「恋を知って結婚したくなりました」なんて側面は、絶対に見せないわけですから。確かに不快なところはあるし、簡単に「おめでとう」とは言えない部分もあるけれど、デビュー前の素人時代は、恋愛どころではないほどに内気だった須藤だけに、「やっと普通の女の子になれたね」って許容することもできなくは…ないかな(苦笑い)。取材対象として向き合ってきたことも含めて、「とにかく絶対に許せない」って感情ではないですよ。いつかこういう時は来るわけですから。そして、須藤に関しては、「甘い誘惑に乗って辞めることになった」というのとは、少し違うとも感じています。

 B(スポーツ紙記者) なるほど。

 A 須藤は会見で最も驚いた発言は、「アイドルの恋愛ついては?」という質問に対して、「個人的な意見は、恋愛は自分の判断に任せるものと認識していました」と言い切った場面でした。1、2年前には、堂々と「処女です」と言い切り「アイドルに恋愛はご法度」と主張していた須藤が、持論を180度も変えてきたのには、苦笑いするしかなかったです。ただ、それは彼女の置かれていた環境が、そうやってハードルを下げさせていった部分も少なからずあったのかもしれません。もちろん運営は常に努力をされているし、事件について責められる必要はないと思っています。ただ、48グループに限らず、近年はアイドルの恋愛スキャンダルに対して、メンバーもスタッフも、そしてファンまでもが、全体的に慣れてきてしまって「免疫力」が付きすぎてしまっていたかもしれません。そんなところで、一気に結婚宣言まで行き着いてしまったのかなと。

 C 須藤は総選挙後の会見以降、一切取材に応じられない状態になっているから、様子が分からないんだけど、会見はどうでしたか?

 A 私は須藤の会見も取材をしました。そしてBとともに、この1カ月で須藤ファンの話も聞かせてもらってきました。ファンが握手会で本人に尋ねたら「会見では何を話したか、ほとんど覚えていない」と話しているそうなのです。確かに、あの会見では現実を受け止めきれずに、極度に緊張をしていました。約1時間の対面取材で出た私の結論は、「アイドルとしては度胸満点で革命的な道を切り開いていた須藤も、恋には夢中になってしまう普通の女の子だった」ってことです。初恋に溺れてしまった普通の女の子でした。

 一同 うんうん。

 A 総選挙での表明にも深い戦略はなく、その後の世間の反応にも想像が及ばないほど、テンパっていたと感じました。須藤をよく知るファンは一様に、「彼女は他人に指示されるのを嫌い、自分主導で物事を進めたい性格」と言われます。週刊文春に撮られたことを知り、「一方的に報じられるのは悔しい。ならば自分から一気に結婚まで明かして、主導権を奪ってみせる」と考えたのではないかと。だから、報じられる前に先手を打つには、時系列としても総選挙の場しかなかったのだろうと。須藤ファンも、同じように想像している人が多かったです。

 C そういうところは幼いし、やはり自分勝手だったと思います。芸能人は自分1人で存在してるわけじゃないんだから! 誰でも言いたいことはいっぱいあるけれど、マナーとして我慢しているわけです。須藤だけが、周囲への迷惑も考えずに、好きな場で言いたいこと言っていいわけないでしょう、というツッコミどころが、アイドルの恋愛・結婚問題とは別の部分でも目立った一件だったので、批判が最大級に多かったのだと思います。

 B 時間的にはもう総選挙の場しか言える場がなかったんだろうけど、最低限のマナーとして、あの場はふさわしくなかった。実際に多くの人を不快させてしまいましたから。

 A 僕らは、須藤のセンスある言葉の選び方や使い方、独特な物の見方に取材対象として、引かれていました。今でも、その才覚はほかのアイドルにはないものと認めています。ただ、威勢良く、かっこいい言葉も、実際は軽かったとは言わざるを得ないところはあります。彼女は総選挙の投票中に「私が坂道(乃木坂46と欅坂46)に流れたミーハーたちを全部取り戻す」って宣言しました。その瞬間は、私も「たくましいこと言うな~」と感心したのだけれど、実際の彼女の行動や生活には、その言葉の重みやグループを背負う責任感はなかったわけなので、そこは「結婚宣言アリ派」の私でも、ガッカリした部分でした。

 D(フリーライター) 横山由依総監督が同じ立場だったら言わないでしょうね。たとえ、そう思っていたとしても、自分が背負ってるものを理解していれば、簡単にそんな言葉は言えないから。

 C AKB48の選抜経験者になると、そんなことは言えなくなるんです。責任の重さを体感することになるから。AKB選抜になったことのない須藤は、まだ本当のプロ意識が芽生えるとこまでは、いってなかったってことなんだよね。

 A 「私、突然に人を好きになっちゃったから辞めます」では、今までエースにしようと育ててくれた関係者やファン、そのために投資してくれていた人たちのことを考えた行動や決断とは、言えなくなってしまいますからね。ドラフトで指名から恋愛を始めてしまうまでは、全身全霊でアイドル業に励んでいたことを知るだけに、最後に惜しい行動となったことは、否めません。

 D 彼女は、マジメだけど子供…。もちろん、おもしろい子ですよ。トリッキーだし、かつ頭もいいし。魅力的な要素を複合で備えていた。自由にやらせていたから光っていたし、我々もその姿や活動を楽しんでいました。

 A ほかのグループ以上に器量の大きいNMB48だからこそ、異端児の須藤を生かせたし、才能を伸ばすことができました。

 B 私とAは、この1カ月で2回、熱心な須藤ファンの集まりを取材させてもらったんだけど、本当に賛否両論でした。絶対に許せない人、それでもまだ応援し続けたい人、結婚以上に卒業してしまうことが悲しい人、もう早く卒業させてあげたい人などなど…。世間は、ファンが「失恋」をしていると思いがちだけど、むしろその感じは少なくて、みんなは突然、一緒に夢(アイドルの頂点)を目指せなくなったことにショックを受けていたのです。

(続く)