中国と北朝鮮の国境にそびえる白頭山は標高2744メートル。富士山と同じ活火山だ。大噴火は1000年に1度、小噴火は100年に1度の周期で起きており、最後の大噴火は946年、小噴火は1925年というから、27日公開の映画のタイトルにもなっている「白頭山大噴火」はあながち絵空事とは言えないようだ。

「日本沈没」のようなこの題材をイ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソクの競演で描いた文字通り最大級のパニックムービーだ。

南北朝鮮の融和が進む近未来。白頭山で観測史上最大の噴火が起こり、マグニチュード7・8の地震はソウルでもビルを倒壊させる。ただでさえ危機的状況の中で地質学者のボンネ(ドンソク)は、白頭山の地底には4つのマグマだまりがあり、この先想定される最後の4次爆発は朝鮮半島全域に壊滅的な惨事をもたらす、と予測する。

4次爆発を防ぐには白頭山の地下坑道で人工的な爆発を起こしてマグマ溜まりの圧力を下げるしかないというのだ。

リミット75時間という制約や微妙な国際関係から米国からの支援は望めない。ボンネ博士を顧問に迎えた大統領府は、わずかな可能性に懸けて決死隊の派遣を決める。最初の噴火で大混乱に陥っている北朝鮮に潜入し、隠されている核弾頭を奪取した上で、白頭山の地下坑道を爆破するという不可能とも思えるミッションだ。

本隊アルファチームをサポートする技術部隊デルタチームの隊長に抜てきされたのが爆発物処理の専門家インチャン大尉(ジョンウ)だった。だが、火山灰の影響でアルファチームを乗せた軍用機はあえなく墜落。デルタチームのみでの作戦遂行を余儀なくされる。

彼らを核施設や地下坑道に導くのが韓国政府にひそかに情報提供を行ってきた北の工作員ジョンヒン(ビョンホン)だが、したたかなこの男に「技術屋」のインチャン大尉は翻弄(ほんろう)され続けて…。

危険だらけの最前線で、知恵比べを繰り広げ、それぞれの人間味もさらけ出す。ジョンウとビョンホンの息詰まるやりとりが最大の見どころだ。そして今回はアクションを封印したドンソクが見たこともない知的な表情で後方支援に徹する。韓国を代表する俳優の三つどもえに見応えがある。

倒壊するソウルの高層ビル、壊滅状態の平壌、そして地下坑道…。ロケとセットにCGを駆使したビジュアルの練度も高い。

「ヨコヅナ・マドンナ」(06年)で他にない発想力を実感させたイ・へジュンと、「PMC ザ・バンカー」(18年)で今作につながるような世界観を見せたキム・ビョンソの共同メガホン。これでもかという惨事の連続にポッと明かりをともすラストまで、隙の無い娯楽作品に仕上がっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS&DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
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