今年の賞レースを席巻している「アリー/スター誕生」が日本でも先週末からようやく公開されましたが、歌手を夢見る主人公を熱演したレディー・ガガの演技は世界中で絶賛され、来年1月に発表されるオスカーでも候補入りすることは間違いないといわれています。4度目のリメークとなる本作はクリント・イーストウッド監督がビヨンセ主演で進めていた企画でしたが、ビヨンセの妊娠で製作が中止され、当初ビヨンセの相手役に決まっていたブラッドリー・クーパーがそのまま自らが監督と主演を務める形でガガを代役に抜てきして製作されたものです。1937年に公開されたオリジナルの「スター誕生」は、アカデミー賞で7部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。ジュディ・ガーランド主演で1954年に製作された2作目も、アカデミー賞主演女優賞、主演男優賞にWノミネートを果たすなど6部門で候補入り。ガーランドはゴールデン・グローブ賞主演女優賞に輝きました。そして3回目のリメークでは大スター、バーブラ・ストライサンドを主演に迎え、舞台を映画業界から音楽業界に移して大成功を収め、ストライサンドが作曲して歌った主題歌「スター誕生の愛のテーマ」はアカデミー賞歌曲賞やグラミー賞最優秀楽曲賞などを受賞する大ヒットとなりました。

そんな名作にガガが主演することに対し、キャストが発表された当初は否定的な意見が多く、イーストウッド監督も「ガガが主演?と驚いた」と語るなど女優としての実力を疑う厳しい声が圧倒的でした。しかしふたを開けてみると、多くの批評家が「今年一番の映画」と評し、歌手を目指す女性を等身大で演じたガガの見事な演技を手放しで絶賛したのです。ハリウッドではガガ同様に、歌手として成功を収めながら女優としてもスクリーンで輝いた演技を見せたスターたちがいます。

2012年に48歳の若さで急死したホイットニー・ヒューストンもその1人。1992年に公開された「ボディガード」で、世界的スーパースターのレイチェル役を演じたヒューストンは、劇中で披露した「オールウェイズ・ラブ・ユー」が大ヒット。ボディガードを演じたケビン・コスナーとの共演も話題となり、映画初主演で自身と役を重ね合わすかのように見事にレイチェルを演じて作品も大成功を収めました。

「スター誕生」への出演はかなわなかったビヨンセですが、「カルメン:ア・ヒップ・ホぺラ」(01年)ですでに映画出演を果たしています。その翌年は「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」でクレオパトラ役を演じてアフロヘアを披露。06年にはスティーブ・マーティンと共演した「ピンクパンサー」にも出演するなど積極的に女優活動を行っており、1960~70年代のモータウン・サウンド全盛期を舞台にしたブロードウェイミュージカル映画「ドリームガールズ」(06年)でダイアナ・ロスをモデルにしたコーラスガールのキャラクターを好演。この役を演じるにあたって厳しい食事制限で14キロの減量をするなど役作りに励んだことが認められ、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネートされました。

他にもビョークが映画出演2作目となった「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(00年)でカンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得し、作品も最高賞であるパルム・ドールを受賞する評価を受けた他、「マドンナのスーザンを探して」(85年)で女優デビューしたマドンナもミュージカル映画「エビータ」(96年)でゴールデン・グローブ賞主演女優賞に輝いています。今年の賞レースを席巻するガガは、ハリウッドで女優として最も成功した歌姫の一人として歴史に名を刻むことは間違いないでしょう。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)