東宝がスタジオジブリの人気作品「千と千尋の神隠し」の舞台化を発表しました。来年2・3月の帝劇を皮切りに、大阪、福岡、札幌、名古屋で上演し、海外でも人気の作品とあって、海外公演も視野に入れているようです。

アニメや漫画の舞台化では、松竹が「ワンピース」「NARUTО」、ジブリ作品「風の谷のナウシカ」の歌舞伎化などで先行していましたが、01年公開で米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞し、「鬼滅の刃」に抜かれるまで国内の興収ランキング1位(約316憶円)の座を守ってきた「千と千尋」の舞台化は大きな話題となるのは必至です。

過去のジブリ作品の舞台化は、「魔女の宅急便」が蜷川幸雄演出をはじめ何度か舞台化され、「おもひでぽろぽろ」も栗山民也演出で上演されています。一昨年には尾上菊之助主演で歌舞伎版「風の谷のナウシカ」が上演されました。「もののけ姫」も英国の劇団が舞台化し、日本でも13年に短期間の来日公演を行われています。

ディズニーは「美女と野獣」「ライオンキング」「アラジン」「アナと雪の女王」など人気アニメ映画をミュージカル化し、アニメ映画→ミュージカル公演の流れを作ってきました。日本でもアニメや漫画、ゲームをもとにした「2・5次元ミュージカル」が人気となり、東宝も漫画のミュージカル化では「花より男子」「王家の紋章」を上演しています。ですから、最初に「千と千尋-」の舞台化を聞いた時は「ミュージカルになるのかな」と思ったのですが、ストレートプレーと知って、ちょっと驚きました。でも、歌に頼らずに「千と千尋」の世界観や込められたメッセージを伝えようとする潔さに、舞台版がより楽しみになりました。舞台美術、音楽、照明などのスタッフは未定ですが、これまで見たことのないスペクタクルで野心的な舞台になるのではと期待感が高まっています。

主演の千尋役は橋本環奈、上白石萌音のダブルキャストです。ちなみに上白石の妹萌歌は17年「魔女の宅急便」でキキを演じており、姉妹そろってのジブリ舞台版への登場となります。謎の少年ハクや湯屋「油屋」の湯婆婆を誰が演じるのか気になるところですが、映画ではハクは入野自由、湯婆婆は夏木マリが声を担当しました。2人ともにミュージカルを含めて舞台経験が豊富ですから、ファンの間では出演を待望する声が挙がっているようです。ちなみに夏木は、今回の翻案・演出を担当するジョン・ケアードの演出作品「レ・ミゼラブル」に出演していますから、出演の可能性はあるのではないでしょうか。

全キャストの発表は後日の予定ですが、その顔ぶれも楽しみです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)