先日、「菊田一夫演劇賞」の授賞式が行われました。今回で51回目となる菊田一夫演劇賞は、「放浪記」などで演劇界に大きな足跡を残した劇作家・演出家の菊田一夫さんの功績を記念し、舞台で優れた業績を示した人を表彰するものです。今年、6人いる選考委員の一人として初めて選考にあたりましたが、演劇大賞は山崎豊子さんの小説を舞台化した「大地の子」上演関係者一同、演劇賞は石川禅さん、佐藤隆紀さん、上白石萌音さん、松尾スズキさん、特別賞は宝塚歌劇団の演出家岡田敬二さんでした。

授賞式では、受賞した方々が登壇。受賞対象となった舞台への思い、そして喜びを語っていましたが、松尾さんの挨拶は印象的でした。松尾さんは人気劇団「大人計画」を主宰し、シアターコクーン芸術監督を務めるなど、今や演劇界の重鎮と言ってもいい存在ですが、「うれしいです。30数年やってきて、まあまあ名前が知られた演出家だと思うんですけど、本当に賞に縁がなくて。今回の受賞で、ふざけないでちゃんとやれば、賞をとれるんだなと」と話し、会場の笑いを誘いました。

30代で若手劇作家の登竜門・岸田戯曲賞を受賞しました。しかし、その後は映画「東京タワーオカンとボクと、時々、オトン」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、戯曲「命、ギガ長ス」で読売文学賞を受賞しましたが、脚本・演出を手掛けた数々の舞台は賞とは無縁でした。そいうこともあって、「賞に縁がなくて」という言葉になったのでしょう。会場には、受賞対象の「クワイエットルームにようこそThe Musical」に出演した咲妃ゆうさん、昆夏美さん、笠松はるさんも出席していましたが、挨拶を終えた松尾さんは劇中歌を歌うように無茶ぶり。3人は突然の指名に驚きつつも、「ニコチンパラダイス」を歌い、大きな拍手が起こりました。

受賞した方々の喜びがしっかり伝わってくる授賞式を見ていて、選考にはより一層、真摯に取り組まなくてはとの思いを強くしました。【林尚之】