近未来を舞台にレプリカント(人造人間)を取り締まるブレードランナーと呼ばれる捜査官を描いた。82年公開の前作はハリソン・フォードが、続編の当作は、ライアン・ゴズリングが演じている。

 自分探しの物語であり、ラブストーリーでもあり、家族の物語でもあった。前作では、人間とは何か、というような、大きくて哲学的ともいえるテーマが前面に出ていた。続編は、ごく個人的なエピソードや、普遍的なテーマの連なりだ。SFという枠を超えて感情が揺さぶられた。

 あのシーンに隠された意味は…というような余白はあまりない。もしかしたら議論好きには物足りないのかもしれないが、疑問がどんどん解消されていくのは気持ちいい。モヤモヤ感が残っても、すっきり見終わっても、このシリーズ大好きと言えるのは、ドゥニ・ビルヌーブ監督が、前作をいかに大事にして作ったかということだと思う。映像や音楽もすごい圧力で迫ってくる。キャラクターもそれぞれが魅力的。2時間43分の長さにたじろぐかもしれないが、時間は一切気にならなかった。読み終わりたくない小説に向かっているような気持ちだった。【小林千穂】

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