1960年代初め、東西冷戦時代の米国を舞台に、孤独な女性と、水生のモンスターとの愛を描くファンタジー。おとぎ話の体裁をとっているが、現代社会への力強いメッセージをはらんでいる。

 主人公イライザ(サリー・ホーキンス)は、政府の極秘研究施設の清掃員。ある日、南米アマゾンで神のようにあがめられていたという半人半魚の生き物(ダグ・ジョーンズ)が運び込まれる。子どものころのトラウマで声の出せないイライザと「彼」は言葉を介さず、まなざしなどを通じて心を通わせる。

 後半は、いささか早回しの展開も、圧倒的な映像美にぐいぐいと引き込まれた。映像の質感、色彩、水滴の動きにヒロインの心情が映る。メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督の細部までのこだわりが詰め込まれている。

 トランプ米大統領の「アメリカを再び偉大に」という言葉は、60年代を指す。人びとはさらなる繁栄を夢見る一方、人種差別、性差別が激しかった時代でもあった。「異物」を排除しようとする者の醜さ。モンスターはだれなのかを問いかけている。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)