「ニキータ」「レオン」を手がけたリュック・ベッソン監督が、実際の事件に着想を得て脚本を書き、監督を務めたバイオレンスアクション。絶望的な人生を受け入れ、“ドッグマン”と呼ばれる男の壮絶な半生を描く。

主人公のダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は父親の虐待を受け、犬小屋に数年間閉じ込められ、下半身不随になる。おりの中、犬たちとの「共同生活」で「会話」を重ね、揺るぎない信頼関係を築く。人生の大ピンチを犬たちに何度も助けられながら、生きていくために犬たちの手を借り、窃盗にも手を染めていた。

若手演技派俳優ジョーンズが愛を渇望する孤独なダークヒーローになりきった。無敵さはなく、どこか弱々しいが、なぜか引きつけられた。ジョーンズの怪演もさることながら、多種多様な犬種の犬たちの名脇役ぶりが作品の強度を上げている。

キツネ狩りを得意とする小型犬ジャック・ラッセル・テリアの「ミッキー」は、けんかっ早い気性だが、賢くて愛情が深い。主人公の「犬は愛に対してウソがない」の言葉は心に響いた。【松浦隆司】

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