1月9日、M-1グランプリ王者「たくろう」による「NSC凱旋特別授業」を取材した。吉本の養成所で「明日のたくろう」を夢見る生徒たちを前に、きむらバンド(35)赤木裕(34)が自らの体験談を語ったり、生徒からの質問に答えた。
シャイな赤木は最初こそうつむき気味に話していたが、途中からは大きな声ではっきり自分の考えを伝えていた。
生徒たちは先輩からすべてを吸収しようと、食い入るように2人を見つめていた。その現場の片隅でペンを取っていた記者(私です)の感想は
「いやあ、いい話を聞くことができた。きょうはこの取材に来てよかった」
授業の内容は別に記事として出しているが、簡単にまとめれば「今(在学中)は失敗しても、あとで取り戻せる」「いろんな人と出会って、話をして、今できることを楽しんでほしい」というメッセージ。
たくろうの授業を聞くうちに、記者は大きな勘違いをしていることに気づかされた。それは漫才のネタを書くのは赤木の担当で、きむらバンドは一切を相方に任せていると聞いて「え、そうだったのか!」と軽いショックを受けた。
これまで、たくろうの舞台はよしもと漫才劇場などで何度も見てきた。赤木の挙動不審な表情とリアクションにいつも大笑いさせられた。漫才を見るうちに、ネタを書いているのはきむらバンドだと思い込み、疑わなかった。
だが、授業の中で「100対ゼロで、ネタは赤木に任せています。間違いなく赤木はおもしろい。だから僕は信じて任せているんです。腹をくくって、そのネタが最大限に生きるよう、舞台で努めます」と、きむら。
さらに、これからプロのお笑い芸人として旅立とうとする後輩たちに向かって「それぐらい信じられる相方を、NSCで見つけてください!」と続けた。
この言葉には心の底からシビれた。同時に、きむらと赤木の絆(きずな)をガツンと教えてもらった。
この授業の直後、たくろうの先輩にあたる漫才コンビと話す機会があったので、思わず尋ねてみた。
「たくろうのネタ、僕はきむらバンドが書いていると思い込んでいたのですが、実は100%赤木君が書いているんですってね」
すると、その先輩芸人は「え、そうなんですか? 僕もずっと、きむらバンドが書いているものだと思ってましたよ」と驚いた表情だった。
この仕事、何年やっても取材現場に行って初めて知らさせることは多い。
特別授業が終わって、囲み取材に応じたたくろう。ここでも、小さなサプライズが待っていた。M-1決勝の1本目、リングアナウンサーのネタで「KSD…京都産業大学~」という下りについて優勝後、大学から「正しくはKSUなんですけど」という控えめなメッセージがSNSを通じて届いていた。
「KSUが正しいことは知っていました。ただ、ネタのなかでは大学はUよりもDの方がお客さんもピンとくると考えて、そうしたんですよ」と赤木は笑顔まじりで明かした。
この男、漫才では挙動不審なふりして、実はなかなかの策士ではないか。きむらバンドがホレ込む理由が、少しだけ分かったような気がした。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミへキタへ~」)








