フジテレビの次代を背負って立つエースが、榎並大二郎アナウンサー(35)だ。昨年10月から報道番組「Live News イット!」(月~金曜午後3時45分)のメインキャスターを、同期入社したフリーアナウンサー加藤綾子(35)とともに務める。もうすぐパパになるイケメンアナの“ニュースな日々”を聞いてみた。

★報道の顔へ

昨年10月に5年半も進行役を務めた昼帯バラエティー「バイキング」から「Live News イット!」のキャスターへ。バラエティーから、報道番組の顔になった。

「気が付くと半年たっていました。報道に移ったタイミングで新型コロナウイルスの感染者が増えて、コロナ第3波から再び緊急事態宣言が発令されました。『バイキング』は、バラエティーとはいっても討論番組なので、すんなりと報道番組にシフトできたと思います。キャスターという立場になり、各記者が必死の思いで取ってきた情報を伝える、その重責を日々感じています」

コンビを組むのは08年に同期入社したカトパンこと加藤綾子。16年に退社した加藤とは、17年にバラエティー「クイズ!金の正解!銀の正解!」でも、MCでコンビを組んだ。

「ほんとうに、何の縁でしょうか(笑い)。同期で男性アナは私1人なのですが、椿原(慶子)アナを含め、入社当初から良い距離感でお互い切磋琢磨(せっさたくま)してきました。すでに信頼関係が出来上がっていたので、加藤さんとMCを組むことに何ら不安もなく、すんなりと。ニュースと向き合う緊張感もある中でなれ合いもなく、いい方に作用していると思います」

加藤との出会いは、入社採用試験の時だった。

「最終面接試験で、10人くらいが控室に集められた中で、加藤さんが明るく会話を回していたんです。本人も緊張していたと思うのですが、そんな時でも場の空気をほぐそうと、他人のことを思いやっている。初対面の私にも『速水もこみちさんに似ているって言われませんか?』って。私、固まってしまって『そんなそんな』と適当に受け流したら『あ! 否定しない!』って笑われて。メチャクチャいじられました(笑い)。でも、その距離感がとても自然で、相手に不快感を与えないんです。初対面で、スッと懐に入り込まれました」

★慶応水泳部

入社試験でいじられ、バラエティーでコンビを組み、今は一緒にニュースを伝える。

「番組では2人の役割を明確にしています。コーナーや中継など、基本の回しは加藤さん。私はニュースのプレゼンや、災害・事故が起きた際の絵解き(映像実況)が中心です。不測の事態の時もあうんの呼吸で対応できるのは、同期ならではのことだと思います」

4月からは入社14年目。入社以来、バラエティー、報道で活躍する先輩の伊藤利尋アナウンサー(48)の姿から、多くのことを学んできた。

「常に、伊藤アナが憧れでした。それは今も変わらないです。『バイキング』も『IPPONグランプリ』も、伊藤アナが報道番組に替わるタイミングで、私が引き継いで担当することになったのですが、まぁ、実力の差に打ちのめされましたね。伊藤アナはエースの今でも、一番努力をする人です。仕事と向き合う姿勢も含め、尊敬しています」

アナウンサーを志したのは、就職活動を始めた慶大3年の時だった。

「高校、大学では、部活の水泳部で遠泳に没頭していました。実はカナヅチで、高校入学当時は25メートルも泳げなかったんです。ただ、慶応高校は水泳の授業がなく、このまま一生泳げないのも嫌だなと思い飛び込んでみました。一番長い時は1日で32キロ、10時間くらい泳いでいました。今でもトライアスロンを続けていますが、それはオリンピックディスタンスの1・5キロ。30キロなんて無理です(笑い)。当時、朝練前にいつも『めざましテレビ』を見ていました。出ている人たちが楽しそうで、自分がどんな職場で働きたいのか考えた時に、真っ先に浮かんだのがフジテレビだったんです」

10年前、東日本大震災の年に夕方のニュース「スーパーニュース」に加わった。

「『スーパーニュース』で、長年キャスターを務めていた安藤優子さんの情報量、経験値がすごかったです。現場取材の経験から、さまざまな要素を並べ、事件を点ではなく線で伝えていました。東日本大震災の時は、救出作業が続くブルーシートに覆われている現場から延々と中継をつないでいました。確か10分くらいだったと記憶していますが、全く変わらない映像を見ながら情報を次々と伝えることができる。その域に立ってみたいという思いはあります」

自身はヘリに乗って千葉・市原の臨海コンビナート火災の現場へ飛んだ。熱気を感じながらリポートした。

「この10年で、途切れなく、いろいろな番組を担当させてもらいましたが、そのうち5年半を占めるのは『バイキング』です。生活情報中心の内容から、徐々に時事問題を扱う討論形式へと番組が変わっていくところにたずさわり、MCの坂上忍さんと一緒に仕事ができたことが、大きな財産になりました」

MCの坂上忍(53)にいじられもした。

「坂上さんは、ストイックのひと言。とにかく準備がすごいんです。バラエティーの台本はザックリとしているのですが、坂上さんの台本には、びっしりと自分の意見がメモされているんです。また、1つ1つの言葉に対して真摯(しんし)に向き合っていて『この言い回し、間違っていない?』『イントネーションはこれでいいの?』と、幾度となく聞かれました。仕事は早いけれど準備は入念に。自分の発する言葉に責任を持つ。全て筋が通っていました」

★パパになる

16年2月に結婚した、夫人でモデルの有村実樹(35)が先月末に妊娠を発表。もうすぐパパになる。

「妻も仕事をしているので、手伝うというよりは、家事の分担はできています。実家暮らしで分からないことだらけだったのですが、妻にしっかり研修してもらいました(笑い)。これからは妻の体調を見ながら、わが子に会える日までを大切に過ごしたいと思っています」

次の10年を見据えている。

「アナウンサーとして入社して、まだ慣れませんが、報道ではキャスターと呼ばれています。しっかり役に立って、今度は報道というフィールドで『バイキング』を超える年数をやっていきたい。そこで新しいことを見つけられれば」

報道で“ミスター・フジテレビ”を目指す。【小谷野俊哉】

▼「バイキング」で5年半にわたって共演した坂上忍

アナウンサーといえども人間ですから、ボクは榎並に技術うんぬんよりも「榎並らしさ」が垣間見れればいいんだと言い続けてきました。もしかしたら、それが榎並には大変な作業だったかもしれませんが、ボクは真面目で誠実な榎並が大好きなんです。榎並くん、うまくなんかならないでいいからね(笑い)。

◆榎並大二郎(えなみ・だいじろう)

1985年(昭60)9月30日、東京生まれ。中学時代は野球部、慶応高、慶大法学部時代は水泳部で大学4年時に遠泳セクションで主将。08年慶大を卒業しフジテレビ入社。「笑っていいとも!」「とくダネ!」「バイキング」などを担当。14年、タイで反政府派デモを取材した際、ルックスなどが現地で人気に。それがきっかけで15年、日本の観光庁からタイVJ(ビジット・ジャパン)観光特使に任命される。趣味は海水浴。血液型O。

◆フジテレビ系「Live News イット!」

月~金曜午後3時45分~7時。メインキャスターは榎並大二郎アナとフリーの加藤綾子。情報キャスターは月~水曜が佐々木恭子アナ、木、金曜が石本沙織アナ。アクティブキャスターは木村拓也アナ。

(2021年3月14日本紙掲載)