ミュージカル界屈指の歌姫、新妻聖子(44)が17年ぶりとなるミュージカル・アルバム「MUSICAL MOMENTS 2」を発売した。デビューからがむしゃらに駆け抜けた十数年と、2児の母親としての今。明るくパワフルに突き進む生きざまと、さまざまな経験を重ね深みを増した歌声を届けていく。【玉利朱音】
★130歳まで生きるつもり
太陽のような明るいエネルギーに満ちあふれた人だ。「自分の人生を3分割するなら今ちょうど真ん中の部分にいると思うんです。130歳まで生きるつもりなのでまだ全然折り返してないんですけど。今の医療でもいけるかと思うけど、80年後くらいはもっと進歩してるはずだから。死にたくない。元気なままずっと生きていたい!」。朗らかな口調と軽快なトークで周囲を引き込んでいく。
父親の仕事の関係で11歳からの7年弱をタイ・バンコクで過ごした。両親の影響もあり、幼い頃からさまざまな音楽に触れ、歌手を目指すように。03年にミュージカル「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役に抜てき。当時22歳、帝国劇場で初舞台を踏んだ。
★「ミス・サイゴン」キム役
さらに翌04年の「ミス・サイゴン」のヒロイン、キム役との出会いが大きな転機になったという。豊かな声量と表現力が評価され、13年まで同役で出演した。
「自分はウサギとカメで言うとカメ」と話す。「ミュージカルの専門学校を出ているわけでもなく、芸能一家で育ったわけでもない、劇団出身でもない。右も左も分からずミュージカルに飛び込んだ私は誰よりも出遅れているわけだから、人の何倍も努力しないとここにはいられないと思いました」と振り返った。
「ミス・サイゴン」では複数キャストだったため、自身が出演しない日も欠かさず劇場に足を運び、照明の当たるタイミングなど気づきをメモ。同舞台の休演日には小劇場から大劇場まで、さまざまな公演を見に行った。
「自分の好きな表現を探すところから始めて、そこから火が付いてがむしゃらに頑張っていたら、気付いたら34歳でした。何回か心も折れた。自分を追い込んで走り抜けてきたからできた基盤はあると思います」
同作はベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、ベトナム人の少女キムと米兵クリスの悲恋を描く。キムがわが子タムを守り抜く決死の思いを歌った名曲「命をあげよう」を、このほど発売したアルバム「MUSICAL MOMENTS 2」に入れるべく、17年ぶりに再録した。
★実生活でも2児の母
この17年間で実生活でも2児の母親となった。自身の代表曲といえる同曲のレコーディングを振り返り「子を思う母の歌でもあるから、今回は『新妻さんお母さんだしね』っていうフィルターを通して聞いてくださる方もいると思います。自分で言うのもあれですけど、円熟味を増したボーカルで演奏も正統派の『命をあげよう』を残させてもらえて、こんなに幸せなことはないなと思います」。
17年に一般男性との結婚を発表し、18年に第1子、今年1月に第2子誕生を報告。育児との両立に奮闘しながら、これまで演じてきた舞台や縁のある楽曲を中心に10曲を収録した同アルバムを完成させ、同8月に発売した。
★詳しくない方も楽しく
「ミュージカルに詳しくない方が手に取っても楽しめる1枚にしたくて。手に取った方が新しい良い曲との出会いになればという思いもありますね。1曲目の『僕こそ音楽』はピアノ一本の演奏で、ミュージカルの稽古場をのぞき見しているような風に聞いていただけると思います」
「I Will Always Love You」のレコーディング時にはハプニングも。「次男が熱を出して、元々預ける予定が心配で預けられなくなり、急きょ現場に連れてきたんです。最初2時間くらい私が抱っこしながらレコーディングしました。シュールでした」とほほ笑んだ。
★もう1度昼まで寝たい
子どもが誕生し、ライフスタイルも大きく変わった。「独身時代、1年のうち300ステージくらいやっていたときは、とにかく寝て体力を回復。プライベートは特になくて無趣味で、劇場、家、耳鼻科だけ。たまに自転車で近所にドーナツ買いに行くくらい。子どもができると、もう1度昼まで寝たい! と思いながらもう8年目です。コンサートで1人で地方に行って寝ても、空耳で赤ちゃんの泣き声が聞こえて起きるんです(笑い)」。
常ににこやかだが、子どもの話になるとより目尻が下がる。「1人目はとにかくこの子をちゃんと明日まで生かさないとって、肩に力が入ってた。離乳食はちゃんとオーガニックなものを作って。でも今は缶詰で、すごくよくできているものがいっぱい売ってて。とにかく一瞬でも家族が笑顔になる時間が長いことが一番大事だと学んだので、今いい状態です。自己ベスト!」。
★自分が望んだ形なので
これまで多くの作品に出演し、舞台人として栄誉ある賞を複数受賞。昨年にもミュージカル「ボディガード」でヒロインを務めるなど第一線で活躍し続けている。今年は産後2カ月弱でのコンサート出演や、縁のあるタイ・バンコクでのステージ出演など、育児と両立しながら日々をパワフルに駆け抜けている。
「舞台をやっている時は一瞬一瞬が楽しいし、大変なこともありますけども、毎公演お客さまにいただく拍手やカーテンコールのハッピーな一体感で満たされる。家に帰れば育児は大変だし、眠いし、もう拭いても拭いても床にこぼすし(笑い)。でも結局、まるっとやっぱり幸せ。自分が望んだ形なので!」
1つ1つの幸せを握りしめながら、これからも力強く進み続ける。
▼「MUSICAL MOMENTS 2」収録の「Beauty and the Beast」にデュエットで参加した城田優(39)
伸びやかでピンと透き通るような高音が(新妻)聖子さんの圧倒的な武器だと感じています。そして英語と日本語でここまで歌唱力高く歌いこなせる方はほぼいないと思うくらいです。お人柄もとにかくフランクでいつも笑顔。子育てしながらパフォーマンスをするのがいかに大変かというのは、子どものいる周りの仲間たちを見ていて感じるので。心から尊敬していますし、精力的な活動にすごく刺激を受けています。
◆新妻聖子(にいづま・せいこ)
1980年(昭55)10月8日、愛知県生まれ。上智大在学中の02年に、TBS系「王様のブランチ」リポーターとしてデビュー。03年、ミュージカル「レ・ミゼラブル」に出演後、数々のミュージカル作品に出演。16年に第7回岩谷時子賞など。06年「夢の翼」で歌手デビュー。特技は英語でTOEICは945点。156センチ。血液型AB。
◆MUSICAL MOMENTS 2
新妻による17年ぶりのミュージカル・アルバム。ライナーノーツに記載の本人によるミュージカル作品・ナンバー解説は前作よりボリュームアップ。デラックス盤付属Blu-rayには23年開催の「新妻聖子デビュー20周年コンサート」映像も収録。







