若手ながら劇団有数の実力派スターに成長した星組の礼真琴が、今日21日に兵庫・宝塚バウホールで、主演舞台「鈴蘭(ル・ミュゲ)-思い出の淵から見えるものは-」の幕を開ける。一昨年、昨年と女役の大役が続き、今度はシリアス劇で伯爵家の子息を演じる。公演は31日まで。

 新人公演を卒業した新年の抱負に、勢いよく「星男」とペンを走らせた。卓越した歌唱力、圧倒的な演技力とダンスのキレ、そして表現力。礼はもはや劇団でも有数の実力派スターだ。

 「今回はシリアスで、歌も壮大な曲があります。中世の架空の国なので、マントも着けていて、マントさばきも勉強しました」

 幼い頃、あこがれた女性が、嫁いだ先で死亡。死の謎を探るオリジナル作だ。ヒロイン真彩希帆は、前作「ガイズ&ドールズ」新人公演で、礼が本役のアデレイドを演じた縁がある。

 「真彩ちゃんとは今回、私がちゃんと男に戻り、男女でしっかり話をして体当たりでやります」

 礼は一昨年、2番手スター紅ゆずる主演の「風と共に去りぬ」でスカーレットを、昨年は「ガイズ&ドールズ」で紅の恋人役・アデレイドを演じ、女役の大役が続いた。それが、本来の男役に生きている。

 「こっち(娘役)側の目線で見ることができ、紅さんにしていただいたことが勉強になりました。何げなくすっと体を寄せてくれ、目を合わせて笑ってくれるだけで、(娘役は)こんなにうれしいんだって」

 役柄で使うアクセサリーを手作りする娘役も多い。娘役の努力も知った。「たとえば靴。男役だとパンツに隠れて見えないけど、女役は見える。形も細かく気にして探し、選びました」。前作のけいこ中、紅が誕生日を迎え、クッキーを手作り。自分で装飾した手製パーカも贈った。

 「器用というかやればできるんですよ(笑い)。クッキーは(公演)千秋楽にも。細かい作業は嫌いじゃないですし、やるなら、とことんこだわりたい。手が血だらけになろうとも!」

 女役を経験し「思いっきり舞台ではじけることに怖さがなくなった」。カラオケ好きが功を奏し、女役の高音域の楽曲も歌いこなした。音域の広さには定評がある。星組のCD「ディズニーソングス」にも参加し、原曲キーのまま「レット・イット・ゴー~ありのままで~」を歌っている。

 「カラオケでは、女歌も男歌も歌います。最近は生身の人間では歌えないだろ? みたいな(初音ミクなどの)ボーカロイドも。休みの日に2人で12時間歌い続けたことも。EXILE、平井堅さんとか、男歌で声を休めて、60曲ぐらい」

 休日はもちろん、けいこ後に行くこともある。

 「のど大丈夫? って感じですけど、私にとっては息抜き」。歌唱の上達法を相談されると「絶対カラオケって言います。リズム感も養えるから」。今回、男役の歌唱へ戻れるか不安もあったが「一瞬で戻りました」と、笑った。太陽のような明るい笑顔と快活さが魅力。加えて男役らしいシャープさが増した。

 「去年も、本当にいろいろなことに挑戦させていただいて、きっとこれからも。女役を経験したからこそできる男役像を、あこがれをもって見つめ直したい」

 やりたいことを聞くと「思いっきり踊りまくり、歌いまくりたい」。あふれ出すエネルギーは、今年も止まらない。【村上久美子】

 ◆バウ・ミュージカル「鈴蘭(ル・ミュゲ)-思い出の淵から見えるものは-」(作・演出=樫畑亜依子氏) 中世フランスの架空の公国が舞台。伯爵家の子息リュシアン(礼真琴)は、他の公国へ嫁いだ公女シャルロット(音波みのり)へあこがれを抱いていた。だがシャルロットは、夫殺害の容疑で処刑。真相を探る密命を受け、遺族の1人である娘・エマ(真彩希帆)とともに謀略を暴く。

 ☆礼真琴(れい・まこと)12月2日、東京都生まれ。09年4月「Amour それは…」で初舞台。星組に配属。13年6月「ロミオとジュリエット」新人公演で初主演。14年5月「かもめ」でバウホール初主演。14年11月の全国ツアー「風と共に去りぬ」でヒロインのスカーレットに挑戦。身長168センチ。愛称「まこっつぁん」「こと」「どんちゃん」。