花組トップスター明日海りおは、明日13日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する「MESSIAH(メサイア)」で天草四郎役に臨む。イメージカラーの「赤」をまとい、内面からにじみ出る強さを表現する。ショー「BEAUTIFUL GARDEN」ではチョウになり、マタドールになり…。サブタイトル“百花繚乱”そのもので、多様な顔を見せる。宝塚公演は8月20日まで。東京宝塚劇場は9月7日~10月14日。

 100周年後、劇団新世紀の“顔”としてトップに就いて5年目に入った。「楽になることは、何年たってもないんだなって…。今回はとくに実感しています」。芝居では、江戸時代に幕府の圧政から隠れキリシタンを救おうと、立ち上がった天草四郎を演じる。

 「(演出の)原田(諒)先生のフィクションで、もとは海賊の男が、天草に流れ着く。荒々しい男が天草の人々、イエスの教えから、温かさを知り…」

 前作の博多座公演後、仲間と島原へ行った。資料館や、柚香光(ゆずか・れい)が演じる山田右衛門作が描いたとされる旗も見た。

 「キリシタン文化が根付いている場所をめぐり、お芝居の中にも出てくるんですけど、ほんとに美しい海に、島々が点々とあって…。その景色は、目に焼き付けてきました」

 遠藤周作氏の小説を原作に、隠れキリシタンを描いた映画「沈黙-サイレンス-」もあるが、これには「いや、あの…かなり…怖いじゃないですか。なので、1人で見られなくて…少しずつ、稽古場でみんなと見ました…」。照れ笑いしながら語る。穏やかな性格そのまま。だが、ひとたび舞台に立てば雄々しく、強く変身する。今回、役柄のイメージカラー「赤」「エンジ」にも思いを秘める。

 「天草側の衣装は現代的なエッセンスが。私はブーツ。勇気をテーマに歌う場面もあり、熱く戦う思いが色に込められています」

 取材日だったこの日、選んだ洋服も赤だった。

 「はい、赤色を身に着けて。赤を着ると、気合が入ります。普段は紺、白、ブルー系(の服)が多いんですけど、主演(トップ)になってからは赤が増えたかも。ショーでも、真ん中の人は赤が多いので、赤が似合う人になりたい、赤が着こなせる人になりたいと」

 トップに就いた劇団最古の花組カラーはピンク、赤系。センターに立つ者の衣装は必然的に赤系になる。

 「私にとっての神を考えても、自分自身がトップを経験して、歴代の皆さまは、みーんな神様だなって思いました(笑い)」

 衣装、髪形も細部にこだわり、妥協を許さず役に向かう姿勢で、組をけん引するスタイル。髪にも赤色を入れるようこだわった。ショーは、サブタイトルが「百花繚乱」。多彩な顔を見せ、こだわりも強い。

 「いろんな花が咲き乱れている模様を。舞踏会場面でチョウになったり、シルクハットとステッキで黒えんび、マタドールにもなります。稽古場は今、ものすごく活気があり、みな、それぞれが新しい可能性に挑戦している。今回も楽しく苦しみ、頑張りたい」

 組の充実も実感する。今年、長年の夢だった猫を飼った。「留守の時間が長いので、かわいそうですけど、癒やされます」。やっぱり、穏やかな笑み。変わらぬ歩幅、熱量での歩みを続けている。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「MESSIAH(メサイア)-異聞・天草四郎-」(作・演出=原田諒氏) 江戸幕府による禁教令が発布された後も、天草の地には多くのキリシタンが隠れ住んでいた。そこに1人の男が流れ着く。小西行長の遺臣に拾われ、四郎と名づけられた。かたくなだった四郎は、1人の娘との出会いを通じてキリシタンの教えを知る。圧政に苦しむ民衆の忍耐は限界に達し、四郎は立ち上がることを決意する。

 ◆ショー・スペクタキュラー「BEAUTIFUL GARDEN-百花繚乱-」(作・演出=野口幸作氏) 色りどりの花が咲く花園、タカラヅカ。中でも、ひときわ美しい大輪の花を咲かせる明日海りお。比類なき「美の宝庫」花組の魅力を多様な楽曲でつづる。

 ☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。08年「ミー&マイガール」で新人公演初主演。12年、月組準トップ。「ベルサイユのばら」などで当時トップの龍真咲と、異例の主演役がわり。花組へ移り14年5月、同トップ。15年台湾公演主演。昨年、3人目の相手娘役に仙名彩世を迎えた。今年は本拠地の正月公演で、名作漫画「ポーの一族」に挑戦、好評を得た。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。