配信ドラマ。気が付いたらすごい勢いで増えてきている。昔はWOWOWのみだった気がするが、今となっては各配信サイトでオリジナルドラマの制作を積極的に行っている。視聴者数を増やすための大型企画にはじまり、深夜ドラマに近いお試し枠、さらには民放ドラマではできないきわどい内容のものなど多岐にわたる。

視聴者側のメリットとしては、一気に配信されるため時間を気にすることなく、またCMがないことから(CM前のあおりがないという意味で)映画を見ている感覚なのもうれしい。

そこで取り上げたいのは、Netflixで配信中のオリジナルドラマ「サンクチュアリ」。Netflixといえばコロナ禍の中、最も注目を浴びた配信サービスといっていいだろう。「愛の不時着」にはじまり「梨泰院クラス」に「イカゲーム」、国内作品では「全裸監督」に「今際の国のアリス」、最近では「First Love 初恋」と充実すぎるラインアップであり、今では懐かしいステイホーム中のお供といったところだろうか。

「サンクチュアリ」のテーマは相撲、しかも大相撲である。九州から出てきた不良少年が大相撲の世界で一旗あげる成り上がり物語ではあるが、パワハラとも言えるしごきからはじまり、タニマチや八百長問題などかなり踏み込んだ内容になっている。

さらには、俳優の役作りがとにかくすごい。1年かけて体重を増やしたとニュースにあったが、全員が本物の力士にしか見えない。内容もだが、Netflixの本気を見た気がした。もちろん一気見させていただきました。

そこで今回紹介したいのは、「サンクチュアリ」に出演している忽那汐里(くつな・しおり)。物語では、相撲部屋を取材する帰国子女の新聞記者を演じる。最初は伝統ある相撲のしきたりに対しコスパが悪いとかみ付くが、徐々に主人公の猿桜(一ノ瀬ワタル)にみせられ、気が付くとよき理解者にとなっていく。自身の社会人としての背景と、成り上がっていく猿桜を重ね合わせることで、どこか視聴者目線に置き換えることが出来る重要な役割。そこで、過去に新人賞なども受賞した確かな演技力は健在していた。

忽那汐里、1992年、オーストラリアのシドニー生まれ。第11回全日本国民的美少女コンテストにて審査委員特別賞を受賞し芸能界デビュー。ポッキーのCMなど順調にキャリアを重ね、同じ事務所の武井咲、剛力彩芽とオスカー3人娘と呼ばれていたが、近年は作品数が減り事務所も退所。その後、気が付くとハリウッド映画に出演するようになり、今ではハリウッドで最も活躍している女優だといっていいだろう。日本のドラマで見たのは久々であったが、世界中で配信される中、彼女が俳優としての番付を上げていくのか楽しみである。

最後に物語に話を戻すと、大相撲がテーマなので男の話かと思いきや、忽那はじめ、女優陣がイキイキとしていている。主人公の母親を演じた余貴美子はもはや怪演といってもよく、他にもおかみ役を演じた小雪や仙道敦子もはまり役だと思えた。実際にそうなのかもしれないが、男だらけの中だからこそ、女性の強さがより際立つ世界なのかもしれないと考えさせられた。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新映画「追想ジャーニー」が公開、今年3月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」も上演した。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)