ゴールデンウイーク中、家で春ドラマを堪能するドラマファンも多いのでは。今期は昭和原作のリメークや、学園スポーツもの、ヤンキードラマ、身分違いの恋など、昭和なジャンルを令和にカスタマイズするトレンドがいよいよ多彩。飛び抜けた満点作品はないものの、楽しみと思える快作は多めの印象だ。「勝手にドラマ評」50弾。今回も単なるドラマおたくの立場からあれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

◇   ◇   ◇

月9ドラマ「元彼の遺言状」(C)フジテレビ
月9ドラマ「元彼の遺言状」(C)フジテレビ

◆「元彼の遺言状」(フジテレビ系、月曜9時)綾瀬はるか/大泉洋

★★★☆☆

勢いで大手事務所を辞めた敏腕女性弁護士と、ミステリー好きな無職のでこぼこ推理。送り手が綾瀬はるかを美化しすぎなのか「お金にならない仕事はしない主義」の高飛車ヒロインがハマらず、バディの大泉洋も巻き添え。3話以降、1話完結でさくっと見やすいものの、受け手を引っ張る人がいないので話が頭に入ってこなくてあせる。月9らしく、銭ゲバすぎる敏腕女子がお金欲しさに快刀乱麻、くらい分かりやすくてもよかったのでは。正体不明な大泉洋が、全話の縦軸にどうかかわっていくのか、もう少し見る。1月期の「ミステリと言う勿れ」が素晴らしすぎて、どうしても比べてしまう。

月10ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」(C)フジテレビ
月10ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」(C)フジテレビ

◆「恋なんて、本気でやってどうするの?」(フジテレビ系、月曜10時)広瀬アリス/松村北斗

★★☆☆☆

恋に本気になれない男女6人の群像ラブストーリー。めそめそした6通りの負のオーラはさすがに多い。さみしくて、初対面のイケメンの胸で泣く部長職ヒロイン、無抵抗のコンビニ店員に八つ当たりする不倫女子など、自立できない女性たちがつるんでは「ヤッた」とか「寝た」とか、そんな女子トークばかりで女性として肩身が狭い。3話からようやく広瀬アリス×松村北斗の“お試しの恋”がスタートしたが、大勢に盛りすぎた設定に脚本がてんてこ舞いな感。段差でよろけてバックハグでキュン、同じものを拾って目が合ってキュン。恋に恋したい心境の人はぜひ。

火曜ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(C)TBS
火曜ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(C)TBS

◆「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(TBS系、火曜10時)上野樹里/田中圭/松重豊

★★★☆☆

娘と父のダブル婚活。「結婚を前提とせず、お付き合いしてくれませんか」という導入に女性キャラの新機軸を期待したが、あっけなく恋愛至上主義が動きだし、昔ながらの恋愛ドラマがこつこつ進む。田中圭と磯村勇斗に取り合いされる夢のテンパイ状態や、婚活パーティーに上野樹里と磯村勇斗と井川遥がいるという浮世離れにも入り込めなかった。SDG,sなタイトル通り、人の優しさが漢方のようにじわじわ効いてくる味わいの一方、人物たちはテンプレ通りで「多様性」の方はいまひとつ。ヨガを通して人生を説く上野樹里が意識高すぎて緊張するので、わがままボディーのゆりやんが登場するとホッとする。

水曜ドラマ「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(C)NTV
水曜ドラマ「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(C)NTV

◆「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(日本テレビ系、水曜10時)今田美桜/江口のりこ

★★★★☆

30年ぶりのリメーク。鬼メンタルなポンコツ新入社員「田中麻理鈴(マリリン)」を今田美桜が迷いなく演じ、元気で適度にずうずうしい突破力が令和でも健在。部署のたらい回しで、備品管理課、人事部、マーケティング部と毎回さまざまな業務スキルを身につけていくフォーマットも飽きない。マリリンに巻き込まれた女性たちが、男女格差の中で本来の能力を開花させていく姿に不変のドラマがあり、元エリート江口のりこの「女性社員はみんな田中マリリン」というまなざしに涙が出た。2話は元祖マリリン石田ひかりが管理職役で登場し、いい物語に。「田中、もっと頑張りたいです!」というマリリンに、私も巻き込まれてみたい。

水10ドラマ「ナンバMG5」(C)フジテレビ
水10ドラマ「ナンバMG5」(C)フジテレビ

◆「ナンバMG5」(フジテレビ系、水曜10時)間宮祥太朗/神尾楓珠

★★★☆☆

普通の高校生になりたい最恐ヤンキー、難波剛の二重生活。ヤンキー一家に内緒で優等生高校に通う両極キャラを、間宮祥太朗がいい振り幅で行ったり来たり。秘密を知ったライバル、伍代を神尾楓珠が涼しい切れ味で演じ、から揚げの恩義から始まった傷だらけの友情がすてき。友を得た伍代のぎこちなさと、危険な二重生活に巻き込んだ剛の葛藤がしっかりかみ合って絵になる。「夜露死苦」の昭和テイストもぬかりなく、宇梶剛士、鈴木紗理奈ら“本物”も脇で安定。義理人情と、なんだかんだ女子に弱い漢ぶりというヤンキードラマのツボは押さえている。愛犬の「松」がいい仕事。

木曜ドラマ「未来への10カウント」(C)テレビ朝日
木曜ドラマ「未来への10カウント」(C)テレビ朝日

◆「未来への10カウント」(テレビ朝日系、木曜9時)木村拓哉/満島ひかり

★★★★☆

人生に絶望した元ボクサーが、廃部危機にある母校ボクシング部のコーチに。弱小チームの逆転劇という定番だが、大人にムダぼえしない今どきの生徒像がよく描けていて、やる気のないコーチを合理的に利用し、動かしていく構図は新鮮。昭和なジャンルを令和にカスタマイズするドラマ界のトレンドの中では成功していると思う。キムタクが、ここまで人生を投げた人物を演じるのは初めてでは。「ちゃんと教えてくれる人を待っていた」というストレートな青春と、必要とされて少しずつ変わっていく48歳のジャブな歩み。ボクシングそのもののコンビネーションが両A面の成長物語となり、適度なコメディーでさくっと楽しい。

木曜劇場「やんごとなき一族」(C)フジテレビ
木曜劇場「やんごとなき一族」(C)フジテレビ

◆「やんごとなき一族」(フジテレビ系、木曜10時)土屋太鳳/松下洸平

★★☆☆☆

昭和ジャンル多発の中、こちらも“身分違いの恋”という古くからの定番。上流社会に嫁いだ下町娘が、大奥みたいな魑魅魍魎(ちみもうりょう)と戦う。池落ち、水かけ、サウナ監禁など、コテコテな嫁いびりの昼ドラワールド。個人的に苦手なジャンルなので脱落するが、「庶民なめんなよ」のスポ根テイストに体育会系の土屋太鳳はハマっている。というか、見どころはもはや長男の嫁、松本若菜劇場の一択。「調子に乗ってんじゃないわよこの雨後のたけのこがぁ~」で始まったコメディー力がすさまじく、今後ドラマ界で引っ張りだこだと思う。小沢真珠が飲み物を持っているだけでぶっかけそうな不穏が盤石。

金曜ドラマ「インビジブル」(C)TBS
金曜ドラマ「インビジブル」(C)TBS

◆「インビジブル」(TBS系、金曜10時)高橋一生/柴咲コウ

★★★★☆

未知の凶悪犯「クリミナルズ」に後輩を殺された刑事と、情報提供を申し出た女犯罪者キリコの異色タッグ。大河ドラマ「おんな城主 直虎」で壮絶な主従の愛を描いた高橋一生×柴咲コウがサスペンスでもいいコンビ感。「犯人、捕まえたいんでしょ」「お前の目的は何だ」という上下関係のにらみ合いが、新鮮なような、懐かしいような。「花火師」「調教師」「演出家」など各話のモチーフにエンタメ性があり、痛そうな格闘シーンや爆破からの川落ちなど、ガラの悪い高橋一生が意外なアクション力を見せているのも新鮮。脇と映像に残念ポイントありだが、直虎コンビの一点豪華主義で全然OK。

土曜ドラマ「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」(C)NTV
土曜ドラマ「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」(C)NTV

◆「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」(日本テレビ系、土曜10時)ディーン・フジオカ/岸井ゆきの/ユースケ・サンタマリア

★★★★☆

脳内チップ、AIロボット、不老不死テクノロジーなど、最先端科学の怪奇事件がエンタメ性抜群。知的でノーブルな警視正にディーン・フジオカはぴったりで、多少雑な展開も気にならない画面支配力は相変わらず。映画監督羽住英一郎氏の映像は今期ぶっちぎり。ロケもセットも奥行きがしっかりあり、映像のたたずまいという“ルック”の分野で韓国ドラマと戦えていてホッとする。バディとなる天才科学者に岸井ゆきの。天才という設定だけで具体的な描写はなく、現状、主人公と生活をともにする助手ピノコの域。ダークサイドの高揚感をオペラで演出した2話は「ヴィンチェンツォ」っぽい名シーンだった。

◆「マイファミリー」(TBS系、日曜9時)二宮和也/多部未華子

★★★☆☆

誘拐をテーマに描く家族のきずな。娘を取り返すため、再び力を合わせる仮面夫婦の奮闘を二宮和也×多部未華子がいい距離感で演じ、仕事も家庭も人任せな風雲児にやる気スイッチが入る過程が丁寧。ゲームアプリやライブ配信を使った犯人との攻防にも令和の工夫がある。警察が娘奪還の壁となり、夫婦VS警察の攻防も誘拐ドラマとして新鮮だった。3話で事件は無事解決したが、「犯人を野放しにしたことを必ず後悔する」という警察(玉木宏)の警告通りの新章がスタート。人間ドラマというより、真犯人は誰かという考察系ドラマになってきた。日曜に見るにはテイストがかなり重い。

◆「金田一少年の事件簿」(日本テレビ系、日曜10時半)道枝駿佑/上白石萌歌

★★★☆☆

95年の堂本剛以来、松本潤、亀梨和也、山田涼介がつないできた5代目金田一一(はじめ)をなにわ男子・道枝駿佑が襲名。シュッとした草食系のはじめちゃん像が今の時代に合っていて、おちゃらけ感とかっこよさの振り幅がひと回りさわやかに。1話はシリーズの原点「学園七不思議殺人事件」。陰影のある映像の中に高校生探偵らしい素人っぽさを織り込み、理想的な“そこそこの格調”をキープ。美雪(上白石萌歌)との清潔感のあるコンビネーションや、一歩引いた剣持警部(沢村一樹)像の存在感も好感。「じっちゃんの名にかけて」を聞けただけで、ひとまず心躍る。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)